Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は前回の続きで目のトレーニングについて書きたいと思います。
前回の話でポイントになっていたのは「利き目」と「ピントの動き」でした。
周辺視野と中心視野
今回のポイントは「周辺視野」です。
あまりQBに馴れていない人がよく「レシーバー全員を見ることができない」というようなことを言います。
フラッグフットボールでは4人のレシーバーと5人のディフェンスプレーヤーの合計9人を見る必要があるのですが、広いフィールドで9人がどのように動いているのかということを「見る」ことはかなり難しいです。
難しい、というかほぼ無理に近いように思います。そもそも向かってくるラッシャーとディープゾーンを守るディフェンスプレーヤーの2人ともにピントを合わせることができません。
それではどうするか、というと「見る」というよりも「感じる」というイメージで見ます。
感覚としては「Watch」や「Look」ではなく「See」です。
この英単語の使い分けはあくまで意識の問題だとは思いますが、最終的に何がしたいかというと、あまり凝視しないで見る、ということです。
詳しい説明は省きますが、人間の視野には「中心視野」と「周辺視野」という2種類があります。
中心視野とは凝視している視野の中心で、詳しく見ることはできますが、その一方でスピードへの対応が苦手だと言われています。
周辺視野では、中央視野の周辺を指し、詳しく見ることができない代わりに動きへの認知する力は強いとされています。
じっくり見ないほうがいい
QBがレシーバーを探すときには、中央視野よりも周辺視野を活用して9人の動きを把握しようとすることが必要になります。
自分の視力は裸眼で0.1〜0.3程度で調子が悪ければ視力検査の一番上のCも読めないぐらいですが、特に問題なくプレーできています。高校のときに野球やっていたときもそのくらいの視力で打っていました。
よくスポーツで「ボールをよく見て打て!」とか言いますが、本当にボールをよく見る必要があるのなら、メガネかければパフォーマンス上がるはずですが、そうでもありません。
結局のところ、止まっている対象物をいかにクリアに見えるか、という力はスポーツで重要ではなく、大まかに動きを感知する力のほうが重要だということです。
野球でもリリース地点からボールを凝視するのではなく、ボーっと見るほうがいいと言われています。
専門的にはこの見ようとしている中心を「視支点(Visual pivot)」と言うらしいです。この視支点を中心になんとなく見ることで対象物全体の動きを感知することができます。
野球であればピッチャーの肘のあたり、格闘技であれば相手の顎のあたりだと言われています。
バスケでは特定のスペースに視支点を置いてコートの広範囲を網膜の周辺部で捉えるのがいいとされているようです。
なので、フラッグフットボールにおいても多少の違いがあるかもしれませんが、バスケと同じだと思います。自分の感覚的にはラッシャー越しに7ヤードマーカーが置いてる地点ぐらいのイメージだと思います。
QBになれていないプレーヤーがQBをやると、ラッシャーにしか目に行かない、もしくはラッシャーが見えない、ということが多々あると思いますが、これは視支点を置いて全体をボーっと見えていないために起こることなのかもしれません。
QBだけではなくディフェンスでも有効
フラッグのディフェンスにおいては、まずはQBの凝視するのはよくないです。マンツーマンでもゾーンでもQBとレシーバーの両方を見る必要が出てくるので、その一方に意識を集中してしまうともう一方の動きが追えなくなります。
では、どこに視支点を置けばいいのかというのはケース・バイ・ケースになってしまうので何とも言えません。ただ、サッカーやラグビーの視支点が膝や腰あたりがいいらしいので、フラッグを取りに行くときにはボールキャリアの腰らへんに視支点を置くのがいいと思います。
練習で着ているユニフォームの色を統一しないままやってしまうことがありますが、自分はそんな環境ではプレーできません。「見ればわかる」なんて言いますが、これまで書いてきたとおりQBはそもそもちゃんと見ていません。大会でも同じような色のチーム同士で対戦するときにどうやって敵味方把握してやっているのか不思議でしょうがないです。
映画「キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー」で敵味方が混在している状況でキャプテン・アメリカが敵味方を区別する方法を「自分に向かって撃ってくるのが敵だ」なんて言ってましたが、それくらい暴論です。
周辺視野
目のトレーニングについてというよりも、そもそもの意識について書いてきましたが、日常においても周辺視野を意識することでそれに慣れておくことはできると思います。
歩きスマホはいい例で、スマホの液晶に集中していながらも前から来ている人を避けたり、というのは明らかに周辺視野を利用しています。そのときに凝視してしまっていると周りが見えていなくてぶつかってしまうこともあると思います。
そのあたり、対象物とその周りをどのくらいの意識で見るのかいいかを考えるいい材料になるかもしれません。
あとは、アプリのタッチザナンバーというアプリもトレーニングになると思います。
1から25までの数字を順番にタッチしていくだけですが、中心視野を使って一つ一つ番号を探していくとスピードに限界があります。真ん中に視支点を置いて周辺視野を使ってなんとなく見ることで素早いタッチが可能になります。
これで自分がどの程度集中できているのか、というのを試していた時期もあります。
ということで、単純に「見る」という行為でもいろいろ奥深い話があるとことを紹介してみました。