Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回はショットガンとセットバックの作戦的な違いについて書いていきたいと思います。
アメリカンフットボール・マガジンの記事
アメリカンフットボール・マガジン 2016 SPRING シーズン展望 (B・B MOOK 1294)
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発売になれば読んでみての感想やアメフトとフラッグの違いなどについても書きたいと思います。
ショットガンとセットバックとは
アメフトには専門用語がたくさんあって、同じ用語でもチームによってその意味が違っていたりするので難しいのですが、「セットバックとショットガン」というと、スナップをするセンターがどのようにQBにボールを渡すかを指します。
セットバックとは
セットバックはセンターから直接QBにスナップを行います。
ショットガンとは
一方、ショットガンというのは、センターがQBにボールを投げて渡します。
センターはこんな感じで投げてQBにスナップします。投げてスナップすることを「ロングスナップ」とも言います。
プレーはこんな感じです。
セットバックのメリットとデメリット
作戦によってこのショットガンとセットバックを使い分けていくわけですが、それぞれにメリットとデメリットがあります。
セットバックのメリット
- スナップミスが起こりづらい
- タイミングの早いプレーがやりやすい
- ランプレーが展開しやすい
セットバックのデメリット
- ドロップバックをしなくてはいけない
セットバックでは直接スナップを受けるのでもらい損ねることは少なく、ボールの縫い目の位置を調節しておけばスグにボールを握ることができます。なので、プレー開始してすぐにパスを投げることができます。
ショットガンだとセンターがスナップしてからQBに届く時間があり、QBがボールを受け取ってから指を縫い目にかける時間もあるので、パスのタイミングが早い下のようなプレーをするのは向いていません。
これは左にいるCBと中央にいるLBの間のシームに素早くパスを投げて、ランアフターキャッチで一気に進もうという作戦です。
左のレシーバーが最初の1,2歩で一気に加速してディフェンスが反応する前にパスをもらうので、そのタイミングで投げるためにはセットバックが向いています。
また、ランプレーをする場合でもセットバックのほうが向いています。アメフトと違ってラインマンがいないのでショットガンのように後方でハンドオフをしているとディフェンスから見やすくなってしまいます。セットバックでセンターの後ろのほうでハンドオフをすることで多少は見えにくくすることができます。
下図のようにセンターをブラインドをしたランプレーが可能です。
また、ランプレーをするときにはなるべく浅い位置から早いタイミングでやったほうがフラッグフットボールでは効果的です。なぜならラインがなく、レシーバーによるブロックもないので、ボールキャリアがわかればすぐにディフェンス全員がフラッグを取りに来ることができるからです。
下図のようなプレーはブロックが可能であれば有効かもしれませんが、禁止であればっ下手したらスクリメージライン前でフラッグを取られて下がってしまう可能性もあります。
なので、早いタイミングのパスやランプレーをするときにはセットバックのほうがいいです。
しかし、デメリットもあります。
その一つは「セットバックのときは早いタイミングのパスやランプレー」と予想を立てられる、ということです。それをさせないためにセットバックでもタイミングの遅いプレーをする必要があります。
そのときにラッシャーにフラッグを取られないために、QBはドロップバックと呼ばれる後ろに下がる動きをしなければいけません。
ドロップバックはQBするのに慣れた人であればなんてことありませんが、はじめてQBをするプレーヤーにとってはかなり難しい技術です。ドロップバックには下がりながらラッシャーを避けつつ、レシーバーとディフェンスを見るといった同時にいくつもの作業が進行するからです。
ドロップバックがちゃんと出来なければQBサックを食らってしまったり、レシーバーを見る視野が狭くなったりと一気にプレーの質が下がってしまいます。
セットバックにするとほぼほぼドロップバックをしなければならないというのが大きなデメリットです。
ちなみに、上にも貼ったこのプレーではドロップバックはしていません。
ラッシュが入っていないのでドロップバックをする必要がなくラッキーだったとも言えますが、仮にラッシャーが来ても来る前に投げればいいしQBサックされそうになったら投げすればいい、ぐらいに割り切ってやっています。
ショットガンのメリットとデメリット
ショットガンのメリットとデメリットはほぼセットバックの裏返しとも言えます。
ショットガンのメリット
ドロップバックしなくてもいい
遅いタイミングのパスプレーがしやすい
ツインQBができる
ショットガンのデメリット
スナップを落とす危険性がある
早いタイミングのプレーがしにくい
ショットガンではQBは最初から下がってスナップを受けるためドロップバックをしなくてもブリッツと距離があります。なのでドロップバックすることなくパスプレーを展開することができます。ショットガンでさらにドロップバックすればロングパスを投げるための時間を確保することができるので、遅いタイミングのパスプレーがしやすくなります。
また、ショットガンの場合はQBは正面を向きながらスナップを受けてレシーバーを見ることができるため視野が広くなります。ドロップバックに慣れていないと利き手とは逆サイドが見えなくなってしまいがちです。
そういうときにはショットガンを活用するのがいいかもしれません。
ただ、ショットガンにするとスナップを失敗してしまう危険性があります。QBのキャッチミスはもちろんスナップがQBが取れないところにいってしまいセーフティで相手に得点を許してしまう可能性もあります。
ちょっと撮影に失敗していますが、スナップされたボールがQBの頭を超えてエンドゾーンに落ちています。
また、投げてボールを受けるのでQBはスグに縫い目に指を引っ掛けることができません。セットバックではできたプレーも下図のようにショットガンになると一気に難易度が高くなります。
このプレーではショットガンにすることによって、センターからQBに渡るまでの時間、QBがボールを受けてから指を縫い目にかける時間、QBからレシーバーまでの遠くなった距離を投げる時間、という3つの時間がセットバックに追加されてしまいます。
このタイミングの違いを考慮して作戦を考えないと実現不可能になってしまうので注意が必要です。
最後に、少し話しがズレてしまいますが、ショットガンにするとツインQBの作戦をすることができます。
ツインQBというのは文字通りQBが2人いるフォーメーションのことで、ドラゴンフライ隊形とも呼ばれます。下記のようにセンターの後ろに離れて2人セットします。
これによってラッシャーに的を絞らせないようにしたり、この2人間でハンドオフなどをして「パスを投げるか走るか」というオプションプレーをしたりと、戦術的な広がり得ることができます。
上図の場合では2人が横に並んでどちらもQBの含みを残していますが、どちらか一方を下げてRBのように見せかけてから同じようにツインQBの作戦をすることができます。
まとめ
セットバックとショットガンのメリットとデメリットを挙げてみましたが、どちらか一方だけを使うわけではないので、それぞれに適した作戦を作って都度変えていくのがベストです。
ただ、ドロップバックやショットガンを投げるというのはなかなか特殊な技術でもあるので、ある程度は割り切りも必要です。ドロップバックが苦手ならショットガンからのプレーにバリエーションが必要ですし、ショットガン投げられるセンターがいないようであればサックを避けるためにドロップバックやロールアウト(QBがスナップを受けてから左右に逃げて投げる)を身につけなければいけません。
そうやって考えていった先がそのQBやチームの持つ個性になっていくのかな、と思っています。
ということで、フラッグフットボールにおけるセットバックとショットガンの違いでした。