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フラッグフットボールやアメフトについてあれこれ書きます。~武器はたゆまぬ K.U.F.U.~

スポーツの技術指導のときに一番大切なのは、教えてるのがイメージなのか動きなのか、意識すること

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Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)

今回はあらゆるスポーツにおける技術指導のときに意識したいことについて書きたいと思います。小学生への指導に限らず、チーム内でのアドバイスなどについても共通する話です。

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自分の指導歴

上の写真は小学生の練習での自分の様子です。所属している「所沢WILD359ers」は小学生へのスポーツ指導がメインで、試合をやっているのはほぼついでです。

 

なので、チームメンバーのほとんどが小学生のフラッグフットボールチームの指導をしており、自分もいまはガッツリやっているわけではないですが10年近く関わっています。

 

また、浦和レッズの聖地・駒場スタジアムでサッカーを教えていたり、マリノスの本拠地・日産スタジアムで陸上を教えていたり、という感じです。

 

何かコーチングの資格あるわけではないので、プロフェッショナルというわけではないですが、たくさんの小学生を指導する機会に触れ、思うことを書いていきます。

 

できないことをできるようにするのは難しい

例えば、過去のこのブログでスパイラルがかかったボールをどうやって投げるかについて書いています。

qboekendorp.hatenablog.com

 

検索からこの記事を読んでくれる人もたくさんいるみたいなのですが、実際に自分の指導でスパイラルがかかったボールを投げられるようになった子どもがいたかというと、ほぼ記憶にありません。

 

この記事に書いてあることは自分が投げるときに気をつけていたことがメインであり、小学生に伝えて向上が見えたポイントについて書いています。

 

指導によってできないことをできるようにするというのは非常に難しく、できないものはできないですし、できる人は何故できるか説明できないことのほうが多いです。

 

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なぜこういったことが起きるかというと、人それぞれに固有の動きやイメージがあるからです。

 

カラダの重心がどこにあるかで動きが違うのでそれに合わせて意識する動きや箇所も変えるというのが「4スタンス理論」ですが、それと同じように野球をやってきた人とサッカーをやってきた人が同じ指導で同じように投げられるわけがないです。

 

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これはボールの投げ方だけではなく、すべての動きについて共通します。バスケをやってきた人はレシーバーの曲がり方が他の人とは明らかに違います。それを活かすのか矯正するのかはチーム次第ですが、その人に染みついた動きやイメージというのはどんな動きをしても影響していきます。

 

できるようになるには自分なりにコツを掴むしかない

できないことをできるようにするのは難しい、としたらどうするか。

 

結局は自分なりにどのような動きやイメージでやればいいかという「コツ」を、「自分で」見つけてもらうしかないです。

 

これまで「できるように"なる"のは」ではなく「できるように"する"のは」と書いていたのはこの主体性が重要だからです。指導やアドバイスをもらったとしても、それをそのまま鵜呑みにしてやればできるようになることは少なく、それを解釈して咀嚼して何度も試してみて自分に合う動きやイメージを見つけていかなければ上達しません。

 

練習するときに「とにかく数をこなせば上手くなる」みたいな話がありますが、これはその機会を増やすことによってコツを掴む可能性が高くなるということであり、やみくもに数をこなせば慣れてくるみたいな話ではなりません。

 

コツを掴んでもらうためには

ということで指導するときには、いかにコツを掴んでもらうかということに注力するわけですが、ここでようやく今回言いたいことです。

 

ここまで「動きやイメージ」と書いていましたが、この2者は全くの別モノであることを指導やアドバイスするときには意識しなければいけません。

 

動きというのは、文字通り実際に動いている動きです。

 

イメージというのは、その動きを作りだしている「当人が思い描いている動き」です。

 

武井壮さんが「自分のカラダを思い通りに動かす」と言っているのは、この2者のギャップをなくすということを意味しています。逆に言うと、アスリートであってもこの2者のギャップが存在するということです。

qboekendorp.hatenablog.com

 

いくら上からボールを投げろと言っても肘が下がって横から投げてしまうプレーヤーがいますが、それは指導を意識できていないのではなくて、動きとイメージのギャップを理解できていないからです。

 

そんなプレーヤーに口酸っぱく上から投げろと言っても無意味です。いま実際はどんな動きをしているのか、どんなイメージを持って投げているのかを確認して、本来やりたい動きはどのようなものなのか、そのために持つべきイメージはどのようなものなのかを探していかなければいけません。

 

指導者はいま言っているのは、本来やりたい動きを伝えているのか、そのためのイメージを伝えているのか、ということをしっかりと意識していないといけません。前者だけ言っても持っているイメージそのものが間違っている可能性が多いにあります。

 

よく野球の打撃理論で「上から叩け」と言いますが、実際に上から最短距離でバットを出せばショートゴロを連発します。理想的なレベルスイングをするためには、遠心力などを考慮した上で「上から叩くイメージ」で振るとちょうどいいといい、というわけです。

 

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王監督に「最短距離でバットを出せ」と言われた城島選手は「自分だってアッパースイングだったじゃないか」と反論した、というエピソードが下の動画で語られています。王監督のアドバイスはイメージの話であり、城島選手の解釈は実際の動きの話であったためにこのような齟齬が起きてしまいます。

 

 

このようにイメージだけに頼った指導はいろいろなズレを生み、効果が発揮されません。動きとイメージを明確に分けて考えなければいけません。

 

優れた指導者ほどたくさんのイメージを持っている

自分とは違う動きやイメージを持っている人に自分のイメージを伝えてもうまくいきません。なので、指導するときには自分とは違うイメージを伝えることも必要なります。

 

どの本で読んだかはすっかり忘れてしまったのですが、指導する心構えとして意識しているのが下記の2点です。

 

・同じことを200回でも言う気概を持つこと

・同じことを20通りの表現で伝えられるようにすること

 

1つ目はそもそもできるようになることは難しいので、1回言ったところでわかってできるようになるはずもない、というのと、必要ならば何度でも言う根気がないと指導はできないということです。

 

2つ目は、同じこと同じように何度も言っても伝わらない可能性があるので、別の言い方にできる表現力が必要ということです。

 

 

例えば、スパイラルのかかったパスを投げるには腕の動きが重要ですが、それを表現する場合に、

 

1.腕を内旋-外旋-内旋させる

2.薬指でボールを引っ掛ける

3.人差し指で最後押し出す

4.投げ終わりに手のひらが下を向くようにする

5.目の前にある輪っかにボールの先を通すように押し出す

6.腕を振るだけで勝手にボールが離れていく

7.反対の耳の上から投げるようにする

8.頭の上でチョップするように投げる

 

といった感じでたくさんのイメージで表現することができます。

 

1は野球をしていたときに意識していたことで、誰に言っても伝わりません。

 

2は小学生用のボールを投げるときに持っている自分のイメージです。

 

3はオービックの菅原選手がテレビで言っていたことで、後輩もこのイメージで投げていますが、自分は人差し指を意識するとうまくいきません。

 

4は小学生に言うときにボールリリースよりもその後をイメージしてもらうことでよくなることがあるので、そのときに言うイメージです。

 

5はアメフト部だった後輩が習ったというイメージですが、自分には全くピンと来ません。

 

6は自分が調子がいいときに意識するイメージです。とにかく腕を振ることだけを意識しています。

 

7は自分が調子悪いときに意識するイメージです。たぶん肘が下がってしまう癖が出ているので、極端なイメージを持つことで修正しています。

 

8は小学生の体験会などで伝えている表現です。スパイラルを掛けようとすると手首をひねりがちなので、チョップで振ることで自然とリリースで内旋していくはずです。

 

 

こんな感じで人によって、または調子によって同じような動きをする場合でも違う表現をしなければいけません。優れた指導者はこういった表現方法をたくさん持っていることで確実にいろんな人に指導をすることができます。

 

長嶋監督の指導法もおもしろい

ジャイアンツの終身名誉監督の長嶋さんは「ギュッ、パーン」みたいな感覚派な指導が有名ですが、こんな理論的な話もしています。

 

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裏でどんな指導をしているのはわかりませんが、擬音をよく使うのは、実際の動きよりもイメージを大切にしていたんだと思います。

 

オノマトペの研究もたくさんありますが、言葉によってイメージが変わり、実際の動きに大きな影響を与えることは明らかです。

 

スポーツオノマトペ―なぜ一流選手(トップアスリート)は「声」を出すのか

スポーツオノマトペ―なぜ一流選手(トップアスリート)は「声」を出すのか

 

 

身近な例を挙げると、「ふにゃふにゃ〜」と口に出して前屈するだけで立位体前屈の記録は上がります。

 

長嶋さんはこういったイメージの話を非常に大事にしていたから擬音を多用する指導法をされていたのだと自分は解釈しています。合う合わないがあるのも、長嶋さんのイメージの引き出しがご自身のものだけだったからだと思います。

 

「QB道場」での練習でも「ギュッ」とか「トントンターン」とか言いながらやったりもします。

 

まとめ

長くなってしまいましたが、指導やアドバイスをするときにイメージを伝えているのか、実際にして欲しい動きを伝えているのか、どちらなのかを意識して伝えないと効果はないですよ、という話でした。

Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)