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フラッグフットボールやアメフトについてあれこれ書きます。~武器はたゆまぬ K.U.F.U.~

小学生向けのフラッグフットボール教室の導入メニュー

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Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)

今回は、小学生を対象とした「フラッグフットボール教室」や「フラッグフットボール体験会」などの導入でやっている指導案、メニューについて書きたいと思います。

 

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フラッグフットボール教室で何を教えるのか

クラブチームでフラッグフットボールを教えるのと、小学校や児童クラブなどに出向いてフラッグフットボールを教えるのではその方向性が大きく異なる可能性があります。

 

クラブチームでは大会に出たり試合をするための技術向上を目的としたメニューを入れていく必要がありますが、小学校や児童クラブでフラッグフットボールをするときには技術向上よりも、いかにその時間を楽しく過ごすことができるのか、いかにフラッグフットボールのエッセンスを感じ取ってもらえるのかを重視します。

 

もちろんそのときそのときの状況によって変わりますが、とりあえずフラッグフットボールというスポーツはどんな感じのスポーツで、どんなふうに楽しむといいのか、ということを知ってもらう導入メニューを今回は紹介したいと思います。

 

 

フラッグフットボールのエッセンス

フラッグフットボールの一番の特徴は「ハドル」です。いわゆる作戦タイムのことですが、ハドルなしにフラッグフットボールをやるのは休み時間にみんなで鬼ごっこしているのとそんなに変わらない状況になってしまいます。

 

フラッグフットボールの導入段階では作戦の駆け引きやその精度などについていろいろとやることはできません。

 

なので、イメージとしてはしっぽ取り鬼ごっこをフラッグフットボール風にデザインしてハドルが必要になったり、ハドルによって勝ち負けがちょっとだけ左右するようにします。

 

アメリカンフットボール経験者がやりがちな、ハンドオフやスナップのやり方を教えてるとかそういった技術向上はほとんどやらないようにします。

 

導入をやったあとに試合形式をしていこうとする場合でも、スナップは不要だと思いますし、楕円形のボールを使う必要もないと考えています。

 

qboekendorp.hatenablog.com

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導入メニューの流れ

メニューは学年構成や時間、回数によって変えますが、基本的に導入の仕方は一緒です。

 

時間があるからこのメニューを入れようとか、最後に試合をこういうルールでやりたいからその導入メニューを入れようという感じで決めていきます。

 

以下が全体の流れです。

 

  1. 挨拶&自己紹介
  2. フラッグフットボールとベルトの説明
  3. しっぽ取り鬼ごっこ
  4. ボール運びゲーム(全員ボール)
  5. ボール運びゲーム(一人だけボール)
  6. 簡易ゲーム

 

2.挨拶&自己紹介

過去にいろいろな小学校の授業でフラッグフットボール教室をやっていて難しいと感じるのがここです。

 

各学校、各クラスごとにノリやテンションが違っていて、自分たちが流れやムードを作っていきたいのにうまく作れないときがあります。

 

所沢WILD359ersでの指導は、大学生がやっているということもあり小学生とお互いに呼び捨てで呼び合うというのがお決まりなのですが、自己紹介で「キョウヘイです。呼び捨てで呼んでね!」と言ったにも関わらず、呼び捨てした生徒たちを先生が出てきて説教しはじめて困った、という経験もあります。

 

呼ばれている立場なので基本的にはその場のルールに自分たちが合わせなければいけないのですが、お互いに緊張感のある関係でやっていくとあんまりいいことはないな、というのが自分の印象です。

 

スポーツを頑張るというよりかは、遊びのなかでなにか気づきがあるといいな、という感じなので、お互いに緊張感なくできることを意識しています。

 

この挨拶と自己紹介のときにある程度名前を覚えてもらって、緊張感を取り除くということと、もう一つ意識しているのが、ちょっとだけ尊敬してもらう、ということです。

 

自分の場合は最初にロングパスを披露します。

 

体育館であれば昇降式のバスケットボールのゴールに入れてみます。

 

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引用:https://nblog.hachinohe.ed.jp/konakne/index_1.html

 

入れてみせます、と言っても入るのはせいぜい10回に1回なのですが、きれいにスパイラルがかかったボールが天井近くまで投げられれば外れてもだいたいは盛り上がってくれます。

 

これをすると、それまでの「よくわからない人たち」が「よくわからないけど、スポーツがうまい人たち」に変わります。そうするとよく話を聞いてくれます。

 

また、見事ゴールに入ればきっと家に帰ってからの話題にもなることも期待しています。

 

 

2.フラッグフットボールとベルトの紹介

ちょっとだけ尊敬を集めたところでフラッグフットボールの説明をはじめます。

 

五郎丸が流行ったので楕円形ボールを見るとラグビーと勘違いされることがありますが、そこはあまり特に気にしません。楕円形に抵抗なく馴染んでくれればアメフトの認識はなくてもいいと思っています。

 

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引用:http://ironna.jp/article/2345

 

ただ、「いまからラグビーやるんだ」という意識を持たれてしまうとタックルしがちなので、そこはそのスポーツに似たフラッグフットボールという新しいスポーツをするというように説明します。

 

ベルトは種類によって付け方が違っているので全員に行き渡ってから順番に説明していきます。そのときに必ず余った紐は外に出ないようにします。

 

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引用:http://npoafterschool.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-4a2c.html

 

上のような状態だと、余っている紐が誤って引っ張られたときにウエストが一気にしまって非常に危険なことになります。フラッグが左右についていること、余った紐は巻き付けるかズボンに入れることをここで徹底させます。

 

このタイミングでフラッグが取り外しできることを実際にやってもらいます。意外とフラッグを引っ張ると取れることに気がつかない小学生がいます。

 

 

3.しっぽ取り鬼ごっこ

次に準備運動も兼ねてやるのはしっぽ取り鬼ごっこです。

 

単純に鬼ごっこの感じでやりますが、フラッグを取る、取られないように逃げるという感覚を養います。

 

全員敵のサバイバル方式や特定の数人が鬼になってフラッグを取っていくなどといったバリエーションなどがありますが、最終的に「取るチーム」「逃げるチーム」の2チームに分かれて攻守交代して対決するという形式をもっていかないと次のステップで混乱することになります。

 

全員敵で次に進んでしまうとボールを持っているはずの攻撃チームも「フラッグを取りに行くの?」という混乱が生じてしまいます。なので、鬼ごっこでありつつも、攻撃と守備を順番にやって対戦していくゲームであることをなんとなくわかってもらえるようにします。

 

 

4.ボール運びゲーム(全員ボール)

しっぽ取り鬼ごっこの流れで今度は「逃げるチーム」がボールを持ち、進行方向を決めることになります。

 

フラッグフットボール協会では以下のようなやり方を紹介しています。

 

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鬼ゾーンが決まっていてフラッグを取るチームはそこだけしか動けず、制限時間のうちにいくつボールを運べるのか、というゲームです。

 

これであればそこまで人が密集、混乱することもないのでぶつかったりすることを減らすことができます。また、誰かがおとりにになるとか、前と後ろの鬼ゾーンの人数配分を変えるといった作戦の余地がでてきます。

 

ただ、これだとかなり鬼ごっこ寄りなので、もう少しフラッグフットボールの寄りにするのであれば以下のようなざっくりと4vs4にします。

 

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ルールは単純にボールを持ってフラッグを取られずにゴールラインを越えたら得点、という感じです。

 

ディフェンスはゴールライン上にいて、スタートと同時に前に行ってもOKです。しっぽ取り鬼ごっこの様子を見てフラッグが取れそうになかったらディフェンスのスタート地点を中間地点にしたり横幅を調整したりします。

 

オフェンス全員が得点するか、フラッグを取られるかすれば終わりで、得点を確認して攻守交代します。4年生ぐらいになればこの時点でマンツーマンにするのか、ゾーンにするのかという作戦を立てるようになると思います。

 

ここで全員にボールを持っているのは、基本的にボールを運ぶゲームであることを認識して欲しいのと、得点をするという成功体験を味わって欲しいからです。

 

フラッグを取るという成功体験は運動ができる子に持っていかれてしまうことが多いので、なるべくオフェンス優位にデザインすることで運動が苦手な子でも人がいない隙にゴールできた、という感じになるのが理想的です。

 

そうやってディフェンスがやられたときに、どうしたらいいだろう?ということでハドルしてマンツーマンしたり、ゾーンしたりという作戦が出てくるとおもしろくなります。

 

 

5.ボール運びゲーム(一人だけボール)

だいたいルールがわかりはじめて少しずつハドルをしはじめたところで、オフェンスのボールを一つにします。

 

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オフェンスはボールを持っている人がゴールラインを越えれば3点、ボールを持っていない人であれば1点などというような傾斜配点にします。何点にするかはそのときどきで変えますが、これによってオフェンスにもディフェンスにも優先順位をつけなければいけなくなるので、自然と作戦が生まれます。

 

オフェンスであれば、いかに誰がボールを持っているのかわからせないようにするか、いかに持っていない人が持っているように見せかけるのか、ということ考えなければいけません。

 

ディフェンスであれば、テキトーに全員が全員を取りに行くと失敗することに気がついてマンツーマンにしろ、ゾーンにしろ、全員が統率して守ることを考えなければいけません。

 

ただ、プレー前に誰がボールを持っているのかバレてしまうと作戦の広がりに欠けてしまうので、ディフェンスはプレー開始の合図まで後ろ向きになります。

 

このルールになると前パスや手渡しのパスをしたくなる子がいますが、一発本番でやるとミスる可能性が高く、そこで失敗するとすごく残念な雰囲気になるので、このルールではパスはなしです。

 

慣れてくればボールを持っていないは得点なしにして、ボール持っている人だけ6点にします。これによってさらにオフェンスは作戦を工夫しなくてはいけなくなり、ディフェンスはわかりやすくなります。

 

ディフェンスが優位すぎて得点が入りそうにない場合には段階的な得点にします。

 

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ボールを3pointsのところまで運べたら3点、最後まで運んだら6点にします。この場合、ディフェンスが不利過ぎるので、スタート地点を中間地点ぐらいにします。

 

 

6.簡易ゲーム

低学年であれば上の一人だけボールを持つボール運びゲームまでで充分だと思います。パスして投げられてもキャッチすることが難しいので、あまり盛り上がれません。

 

何回か練習できる時間などあればやってもいいかもしれません。

 

高学年になるとキャッチできるので、上のルールでパスを追加します。はじめて楕円形のボールを投げることになるので、ブリッツのプレッシャーがあると投げるのは難しくなります。

 

なので、ディフェンスは攻撃開始地点の線を越えて投げようとしているオフェンスプレーヤーのフラッグを取りに行くことは禁止します。段階的な得点方式を採用する場合であれば、走れば必ず1点は入ることになります。

 

オフェンスは落とすと無得点になるハイリスクのパスを選ぶのか、必ず1点は入るランを選ぶのか、というのをハドルで決めます。

 

最終的には、パスを投げるフリをしてディフェンスを下げておいてのランというドロープレーに走ることが多くなります。頃合いをみて、一度ボールを持った人は次の攻撃は最初にボールを持てない、みたいな制限をすると、個々人用にプレーができてくるのでいいと思います。

 

アメフトやフラッグのような3回攻撃、4回攻撃というのは基本的には採用しません。ボールデッドの位置から次の攻撃がスタートするというのがわかりにくいので、一回一回得点をつけて攻守交代していきます。

 

5回ぐらいやる機会があるのであれば、このルールに慣れてから距離などを調整しつつ3回攻撃にします。

 

 

ブロックを入れるかどうか

難しいのはブロックを入れるかどうかです。

 

小学生のフラッグフットボールにおいて、それぞれが役割を持つ、という部分において、また作戦的にもブロックというのは重要な要素です。

 

ただ、はじめたばかりの小学生が走って向かってくるディフェンスをブロックするというのは難易度が高く、危険性も高いように思います。上のルールであれば、レシーバーだけではなく、ボールを持ったフリやパスを受けるフリなど役割を持たせられますし、相手もそれほどうまくないのでそれだけで作戦が成立する可能性が高いです。

 

なので、導入段階で無理してブロックを入れる必要はないと考えています。ブロックありのルールにしてもほとんどブロックを採用しないので、それであればブロックの説明で時間を使うよりも、ハドルやゲームの時間を長くしてトライ&エラーを繰り返してやっていたほうが楽しくプレーできるのではないかと思っています。

 

 

ゴールはどこか

一時期、所沢市の小学校でしょっちゅうフラッグフットボール教室をやっていました。

 

たった1回の教室でフラッグフットボールを認識してもらうことは難しく、それがきっかけとなってクラブに入ってくれる子もいませんでした。小学生としてみれば、単に担任から逃れられるお楽しみの時間だったかもしれません。

 

それでも、将来なにのきっかけでフラッグフットボールに再会したときに何かアクションが起きるかもしれません。

 

小学校の先生になるときに、昔やったフラッグフットボールってのが楽しかったから自分も授業でやってみようかな、なんて思ってくれればいいかなと思っています。かなり小さな可能性かもしれませんが、マイナースポーツが発展していくためにはそのくらいの長期間で考えていく必要があると思います。

 

フラッグフットボール関係なく、普段とは少し違ったスポーツの楽しみ方がある、ということをなんとなくわかってくれるだけでもいいです。そういうタネをフラッグフットボールで少しでも残していきたいと思っています。

 

ある小学校では、次回のフラッグ教室に向けて、放課後にチームで集まって練習したり作戦を作ったりしているところがありました。そういった体験がスポーツの枠組みを越えて日常生活に役に立ってくれればと思っています。

 

 

協会提供の教材

最後にフラッグフットボール協会が提供している小学校授業用の教材を貼っておきます。

 

www.youtube.com

 

今回紹介した導入メニューは少ない時間でたくさんの人でできるようにと考えたものなので、時間や場所に余裕があるのであればオフェンス3人でハンドオフを入れて複雑な作戦を考える方向でやったほうがおもしろいと思います。

 

小学校「戦術学習」を進めるフラッグフットボールの体育授業

小学校「戦術学習」を進めるフラッグフットボールの体育授業

 

 

ということで、フラッグフットボールの導入メニューについてでした。

 

Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)