Written by HOMMURA Kyohei. (@YouTube&@Twitter&@Facebook)
今回はフラッグフットボールのサンプルプレーブックを作ろうということでプレーの作成と解説をやってきたいと思います。
サンプルプレーブック
以前にディフェンスのプレーブックの記事を書きましたが、初心者がフラッグフットボールをプレーしてもらうためにはある程度見本となるプレーブックがまずは必要ではないかと思っています。
作戦をいろいろと考えた挙げ句、思っていたのとは全然違って全くうまくいかなかったというのは残念なので、ベースとなるようなサンプルプレーブックがあればとりあえずそれを使いつつ、いくつか自分たちで考えたプレーを使うというのがいいのではないかと考えました。
自分が使用しているものでよければ下記のリンクより100円ぐらいでご購入いただけます。
このプレーブックでもいいかもしれませんが、たぶんはじめたばかりの人がこれを見てもさっぱりの可能性があるので、一つひとつ解説しながらやっていくのがいいと考えました。
プレーブックのサンプルとしてだけではなく、プレーブックを作成するときの注意点やプレーコールのときに考えることなども込みで参考になるようなことを書いていければと思っています。
All Men Hook
ということで、サンプルプレーブック第1弾は「オールメンフック(All Men Hook)」です。
まずは簡単なところから、ということでレシーバー全員がフックのパスルートを走ります。フックというのは真っ直ぐ走っていって決められた距離で止まる、あるいは少し戻るルートのことです。
決められた距離というのはチームによっていろいろと異なりますが、基本は5ヤードあるいは7ヤードになることが多いです。パスコースについてのポイントは下記の記事を参考にしてください。
この動画の最初のほうにやっています。
QBは直接センターからスナップを受けて3歩ドロップバックしてから素早くパスを投げます。
Strong Points
このプレーの利点として、全員がアンダーゾーンにてパスを受けるのでマンツーマンディフェンスではない限り誰かしら空く可能性が高いということです。
「1-3 ZONE」であれば外側にいるレシーバーが空きます。
「2-2 ZONE」であればセンターか内側にいるレシーバーが空きます。
「3-1 ZONE」であれば相手ディフェンスのLBの位置で、センターか内側にいるレシーバーのどちらかが空きます。
ラッシュを入れずに「2-3 ZONE」や「3-2 ZONE」であっても基本的にはアンダーゾーンを守るディフェンスの数は「2-2 ZONE」「3-1 ZONE」と変わらないので誰かしらが空くことになります。
Weak Points
利点としてアンダーゾーンで誰かしら空くと書きましたが、欠点としてはディフェンスに縦のストレッチ(ディフェンス同士の距離を広げること)が作れないということがあります。
全員がショートパスを受けるために止まれば、ディフェンスは前に出てくることができます。なので、本来ディープゾーンを担当するはずだったディフェンスプレーヤーがパスルートを予測、もしくは反応して素早く空くはずだったレシーバーをカバーしてしまう可能性があります。
そうなるとQBは一気に手詰まりになってしまいます。
そうならないためにも、上記のフックのポイントでも書いていますが、充分にロングパスを受けるフリを見せておくことが必要です。ディフェンスにしっかりロングパスを警戒させておけば簡単に前に出ることができないので、空くはずのレシーバーが確実に空きます。
また、ロングパスを警戒させておけば、ディフェンスはレシーバーとの距離を空けようとするので、カバーカバーされているレシーバーでもパスを通せる可能性が高くなります。
もう一つ気をつけたいのが、ラッシュのブロックによって空くはずのレシーバーに投げられないパターンです。
ありがちなのが「3-1 ZONE」でLBが内側のレシーバーをカバーして、センターに投げたくてもラッシュが邪魔しているという状況です。
これはアンダーゾーンで数的優位は作れているのに作戦負けしています。これの解決策としては、センターが真っ直ぐ前ではなく少し左右どちらかにズラして走るというのが考えられます。
どちらにズレた方がいいのかというのはラッシュが走ってくる角度にも依りますが、内側にいるレシーバーとの距離が近づいてしまうとLB1人でレシーバー2人をカバーされてしまう可能性を考えると、ウィークサイド(セットしているレシーバーの数が少ないサイド)にズレるのが無難だと思います。
もう1つの解決策としては、QBがロールすることでセンターに投げる角度をズラすということです。
左右どちらかにロールをすればセンターへのパスがブロックされる可能性が減りますし、ロールした側のレシーバーとの距離が短くなるのでそのレシーバーへのパスが投げやすくなります。
ただし、この場合、ロールしておいて逆サイドに投げるというのは難しいので、プレーサイドを限定してしまう可能性もあります。ロールした側のレシーバーがうまく空けばOKですが、何らかの事情でそのレシーバーが空かなかった場合、次の選択肢が狭まってしまう可能性があるので注意が必要です。
QB Points
以上の利点と欠点を踏まえつつ、QBの注意するポイントは下の3点です。
- 相手ディフェンスがどんなディフェンスを敷いてくるのか把握する
- ディープカバーをするディフェンスプレーヤーの深さを確認する
- ラッシュの角度がセンターと被らないのか確認する
この3点を踏まえた上で投げるレシーバーを事前にある程度決めておきます。
なぜ事前に決めておくかというと、フックはタイミングが重要なパスルートだからです。ドロップバックしてどのレシーバーに投げようか考える時間があるとディフェンスが前に詰められてしまい、投げるタイミングを失ってしまうからです。
ちゃんとパスを投げることができればショートパスは簡単に止められることは少ないです。なので、事前に第1ターゲット、それがダメなときの第2ターゲットぐらいは決めておいて、もし相手ディフェンスのゾーンを読み違えていた場合には、カバーされていてもタイミングとコントロールで通すというのを意識して投げるのがいいと思います。
Situation
以上のことを踏まえた上で、どのようなシチュエーションでこのプレーを使うかについてです。
基本的には相手ディフェンスが無難に「ロングパスだけは通さない」というようなディフェンスを敷いてくるときに向いています。というのは、そういった状況のときはディープカバーをするディフェンスプレーヤーが深く守るからです。ディープカバーのディフェンスプレーヤーが深ければそれだけアンダーゾーンにスペースがあるということなので、パスを通せるチャンスが増えます。
具体的には、5ヤード地点からはじまる最初のプレーです。特に試合開始直後のファーストプレーです。
ファーストプレーのディフェンスはまずは無難に守ることが多く、まずは様子見であることが多いです。また、フックを通されても5ヤードぐらいであればOKということで無理にパスカットにいかずに、パスを通されてから確実にフラッグを取ることを優先することが多いです。
ただ、チームによってはファーストプレーから前にかけてくるディフェンスを敷いてきます。この試合のファーストプレーがそんな感じでした。
このときはスナップ前にディフェンスが前に来ているのに気がついて左のレシーバーにオーディブル(サインを出してパスルートを変更すること)を出しています。パスがズレていますが、読みが外れたときはパス失敗してもいいから思いっきり遠くに投げるようにしています。
あとは、ハーフラインまで残り3ヤードでセカンドダウンorサードダウンというシチュエーションです。
相手ディフェンスがファーストダウン獲得させないように前に出てきてしまう場合はダメですが、「ファーストダウンは許してもいいからその後の残りのヤード数をできるだけ少なくしよう」というスタンスの場合には有効です。
相手の思惑通りに残りヤード数が多くなりますが、オフェンスをテンポ良く決めていけます。前に出ないとテンポよくパスを決められてしまう、とディフェンスに思わせることができれば後々ロングパスを通しやすくなります。
ReDisign
相手ディフェンスがフックを止めに前に来るようになったらその裏をかいて、下のプレーのようにフックした後に別のスペースに走り込むようなプレーが有効です。
右のレシーバーはフックしていないですが、このへんはタイミング次第でフェイクを入れるかどうか決めたらいいと思います。
下の動画でフックのフェイクした後に別のスペースに走り込む(ダブルムーブ)のパスルートを練習しています。
Motion
パスコースそのままにモーションをしてレシーバーのセット位置を変えると効果的な場合があります。
便宜上、内側のレシーバーがセンターとQBの間をモーションしていますが、実際にはQBの後ろを通ります。
このモーションによる効果は2点あります。
1点目は相手ディフェンスがどのようなカバーを敷いているのかがわかるかもしれないということです。もし、ディフェンスがマンツーマンディフェンスであれば内側にいるレシーバーが移動すればそれに合わせて担当ディフェンスプレーヤーも移動するはずです。
このプレーのときにマンツーマンディフェンスをされると不利に働くことが多いです。
なので、モーションをしておいて事前にそれがわかれば前述したようにオーディブルを出すなどの対策を採ることができます。
もう1つの効果はストロングサイドとウィークサイドを入れ替えることによってディフェンスを混乱させたり、空いたスペースを作ることができるという点です。
ストロングサイドというのは、センターを中心にレシーバーの人数が多いサイドのことです。ウィークサイドは逆に少ないサイドのことを言います。モーション前では右ストロング(右サイドがストロングサイドのこと)で、モーションすることで左ストロングに移行しています。
ディフェンスではオフェンスの様々なフォーメーションに対応するために、「ラッシュはウィークサイドから入って、LBはストロングサイドにセットする」といったルールを決めています。これが単純に左右サイドとするのか、ストロングorウィークとするのかはチームによって違います。
なので、早めに右ストロングと左ストロング、どちらのディフェンスの対応を見ておくことでどんなルールで動いているのかがわかるときがあります。
また、ラッシュはストロングサイドが変わったからといって角度をスグに変えることは難しいです。なぜならラッシュは1秒以上静止しなければいけないので、モーションに合わせて動くとその瞬間にスナップされてしまえばラッシュできなくなるからです。
なので、ラッシュは動けないなかでLBやSFがモーションの対応することになります。
ディフェンスが3-1 ZONEでウィークサイドからラッシュが入って、LBはストロングサイドにセットして内側にいるレシーバーをまずはチェックする、プレーコールだったときを考えます。
内側にいるレシーバーがモーションしたとこによってLBは右サイドから左サイドへと移動します。しかし、ラッシャーは移動するとラッシュできなくなってしまうのでその場からラッシュしようとします。
そうなるとLBとラッシャーが同じサイドにいることになるので、センターのカバーがルーズになる可能性があります。うまくできればLBとラッシュがお互いに邪魔しあってうまく動けない可能性もあります。
実際にはここまでうまくいくケースは少ないとは思いますが、モーションによって相手ディフェンスが混乱するということはよくあることなので流れを掴みたい試合序盤や終盤の勝負所で使うといいかもしれません。
まとめ
初心者がスグに大会で使えるようなプレーブックを作ろうということで書いてみましたが、内容的にはすでに大会に出ている中級者向けのような内容になってしまったかもしれません。
自分がプレーコール出して、実際にプレーするときにはこんなことを考えているということをある程度書いてみました。参考にしてもらえるとうれしいです。
これからどんな感じで書いていこうかはやりながら考えていこうと思います。
ということで、サンプルプレーブックを作る第1弾でした。