Written by HOMMURA Kyohei. (@YouTube&@Twitter&@Facebook)
今回は2018年12月17日(月)に東京ドームで開催された「Japan X Bowl 2018」の観戦記を書きたいと思います。
引用:https://www.asahi.com/articles/ASLDK62S4LDKUTQP029.html
Japan X Bowl
「Japan X Bowl(以下JXB)」とは社会人アメフトリーグである「Xリーグ」の日本一を決める試合です。
予選リーグを行い、上位10チームによる決勝トーナメント戦を勝ち進んだ2チームによって行われ、今年は「富士通フロンティアーズ」と「IBM Big Blue」との対決になりました。
JXBに勝利したチームが年明けに行われる「ライスボウル」にて、大学日本一に輝いた「関西学院大学ファイターズ」と対戦することになります。
富士通フロンティアーズは過去2年連続で日本一となっており、今大会の準決勝でも春の東日本No.1を決める「パールボウル」にて優勝したオービックシーガルズを破り決勝進出を決めているということで、優勝最有力候補となっています。
一方、IBM Big Blueは前述した今春のパールボウルで準優勝、昨年のJXBでも準優勝と着実に結果を残しています。過去にJXBでの優勝はなく、今回初戴冠を目指しての一戦となっています。
お断り
今シーズンの両チームの試合は全く見れてないので、これまでの試合などを踏まえて書くことはできません。
ですので、見当違いのことを書いてしまうかもしれません。ご了承ください。
試合演出
毎回、いろいろと試合演出について書いていますが、試合演出については結構よくなってきた感じがします。
大不評だった「Kiss Cam」はないですし、モニターでリプレイ映像が見られましたし、チーム入場についても照明演出がついてクライマックス感が出ていました。
あとは何といってもDA PUMPのハーフタイムショーが案外いいと思いました。
自分としてはアメフトはポップカルチャーよりももう少しコアなところと結びついてやっていったほうがいいのではと思っています。ただ、ボウルゲームの観戦者はアメフトファンというよりも両チームの企業関係者が多いことを考えると、May J.とかDA PUMPとかミーハー路線のほうがいいのかもしれません。USAを踊っている親子を見てそう思いました。
しかし、そうなると予算的に大丈夫なのかなという感じもします。
あとは、恒例のラインダンス。これが見たいという人もいるっぽいので、申し訳ないですがライスボウルの演奏よりは楽しいかなと思います。
試合結果
最初に試合結果を書くと、終わってみれば富士通フロンティアーズの圧勝という感じでした。
IBMは最後にタッチダウンパスを決めましたが、そこそこ進むけどフィールドゴール止まりのオフェンスでした。富士通は確実にタッチダウンを決めていたので正直3Qなかばぐらいで決着がついた感もありました。
IBMが後半インターセプトを決めて試合の流れを掴みかけましたが、そこで決めきれなかったのが痛かったように思います。
以下、いくつかポイントを挙げていきます。
ライン戦で負けてランが止まらない
試合を通じて大きかったのは、富士通のランプレーをIBMが止められなかったことだったと思います。
富士通のOLが強力で、ランプレーはもちろんパスプロテクションも安定していました。また、新加入のRBトラショーン・ニクソン選手#16が屈強かつアジリティもあって中途半端なタックルはすべて切られてしまいます。
引用:http://sports.jp.fujitsu.com/blog/f-frontiers/archives/4836
下記の記事によるとLBからの転向らしいです。
いつでも準備はできている 走り続ける31歳 富士通RB後藤啓 - ベースボール・マガジン社WEB
LB&RB#16トラショーン ニクソン選手「ランニングバックをやっています」 | 富士通アメリカンフットボール部 フロンティアーズ チームブログ
IBMはボックス内のディフェンスの人数を増やしてランを止めにいっていましたが、エッジを抑えられてアウトゾーンに走られビッグゲインされていました。マンツーマンディフェンスを敷くと、デザインなのかスクランブルなのかわかりませんが、QBランで一気にレッドゾーンまで進まれ、正直どうしたら止まるんだろうという感じです。
富士通は前半でリードをすればランを中心にしてゲームクロックを消費させながら逃げ切ることを考えるので、IBMはなおさらそのランを止めなければいけないのですが、止まらずでした。
エース栗原にパスが集まらない
そんなIBMのストロングポイントとして挙げられるのは、NFLに一番近い日本人プレーヤーとも言われているワイドレシーバーの栗原・嵩選手#81です。
この試合、キックリターンについてはいい感じでゲインすることはありましたが、レシーバーとしては活躍が見られませんでした。そもそも栗原選手がセットしているサイドがプレーサイドになることがあまりありませんでした。
それは栗原選手の対面にセットしている富士通のコーナーバックのアルリワン・アディヤミ選手#40の影響かもしれません。
引用:http://sports.jp.fujitsu.com/cs/news/detail/160129009739/1.html
この試合、ずっとマンツーマンディフェンスに近い状態で栗原選手をマークしており、比較的動きの少ない守備隊形のときでもスナップの前に上がったり下がったりすることを見せて投げにくくさせていたように思います。
もしかしたら、IBMはそこは想定済としてエースコーナーバックを相殺させることができれば他のマッチアップで勝負できると考えていたのかもしれません。ただ、エースレシーバーがキャッチ1回となればモメンタムは引き寄せられない気がします。
ちょくちょく出ていないことがあったので、怪我しているのかもしれないです。
どういった戦略があったのか、どういった事情があったのかわかりませんが、プレー1発でスタジアム中を沸かすことができるプレーヤーの活躍が見られなかったのは残念でした。
ゲームプラン
IBMのボウルゲームを見ていていつも思うのが、なんか勝負を仕掛けるのが遅くない?ということです。
見ている側として富士通が優位になるだろうなというのは予想ついていますし、実際その通り9-21のビハインドで前半が終わっています。相手は試合巧者で後半戦さらに厳しい展開になることを考えるとこのスコアは「もう大勢は決まってしまったのかな」と思わざるを得ません。
将棋で言えば、評価値-1500~2000ぐらいです。
もしかしたら、プレーヤー側は違う感覚なのかもしれませんし、後半とっておきの切り札やスペシャルプレーがあったのかもしれません。なので、これを戦略ミスであるとは言えません。
ただ、見ている側とすれば「あがき」が感じられませんでした。ギャンブルやるなりロングパス投げるなりできることあるんじゃないかと思ってしまいます。これはプレーヤー側の戦略的な話ではなく、観客として面白く展開していかないのが残念という話です。
HCでもあるケビン・クラフト選手がそういったゲームプランを指向していて、それで勝ってきているので、それはそれでいいと思うのですが、なにか不完全燃焼です。
ロスタックルでガッツポーズ
点数の推移が定かではないのですが、IBMが最後のTDを決める前であれば23点ビハインド、決めた後であれば17点ビハインドの状況でIBMのディフェンスがうまくロスタックルを決めます。
23点ビハインドは2ポイントコンバージョンを含めてTDを3回決めてやっと逆転できる点差です。17点ビハインドはTDを2回決めてFGを1回決めれば同点になる点差です。4Qでこの点差は絶望的です。将棋でいえば評価値4000点ぐらいです。
IBMディフェンスはこの状況でロスタックルを決めてガッツポーズをします。実際、ガッツポーズしてもいいくらいのプレーだったと思いますし、序盤であればモメンタムを引き寄せるビッグプレーになっていたかもしれません。試合中ずっとフラストレーションの溜まる展開だったので会心のプレーだったので気持ちが出たのかもしれません。
ただ、見ている側とすればIBMの勝つ方法はファンブルリカバーTDを決めて、さらにオンサイドキックを決めて、TDを奪うということぐらいしか思いつきません。富士通にボールを渡してしまえばランプレーで時間使いながら進められて、しかもそれを止められないのがわかっているからです。
それなのに、(この状況に限っては)たかがロスタックルでガッツポーズするのは自分の感覚からすると不思議でした。
もう「負け確」の状況で、勝敗は置いておいてせめてものビッグプレーを、ということだったのかもしれませんが、自分は若干引きました。
全然気にならない人もいると思いますし、どんな状況でもリクスを避けつつ確実にプレーするというのを大事にしている人もいると思います。自分は、僅差で負けようが大差で負けようが一緒なんだから、どこかでリスクを負って攻めないといけないと思っています。
ライスボウルの展望
これで富士通フロンティアーズが関西学院大学ファイターズとライスボウルで対戦することになりました。
関西学院大学ファイターズの戦力がどうなのかは知らないのですが、正直大学生が勝てるレベルなのかは疑問です。例の事件があって、いつもよりは多少注目を集める試合になるかもしれません。その注目度の高さによって来年以降のリニューアルが議論になればいいのかなと思う次第です。
また、「悪質タックル被害者の...」という見出しが流れることになると思います。
こういった見出しが酷い、という意見もあるようですが、これをつけずに「関学アメフト」では「悪質タックル」と結びつけることは難しいです。日大と日体大、アメフトとラグビーが混同されるくらいなので。
あの事件はひたすらネガティブなイメージだけをアメフトに擦り付けたので、なるべくポジティブな情報を提供するのがいいはずです。だとするならば、何となくアメフト=危険みたいな感じになるよりかは、いろいろあったけどいまは回復してちゃんとプレーしている、プレーどころか活躍して社会人の強豪チームに挑んでいる、という情報が流れるほうがいいと思います。
残念なことですが、そもそも例の事件がなければ関西学院大学ファイターズの何かがニュースになることなどほぼない気がします。
そのへんも含めてアメフトは改革していなかなければいけないのかもしれません。
余談
今回もパールボウルに続いて2階のバルコニー席で観戦しました。
第40回パールボウルの観戦レビューとタッチダウンパスのプレーをちょっとだけ分析 - RED ZONE
席の近くにモニターがあったのでリプレイを見ることができ、とても観戦しやすかったです。応援席からも距離があったのでうるさくてプレーに集中できないということもありませんでした。
ただ、それでも近くには応援している人がいてバカバカと叩いているので、一緒に観戦しているチームメイトと会話することがままなりません。2人ならいいですが、3人で話すことができません。
どちらかのチームを応援せずに静かに見ながら、合間にいろいろとプレーについて話したいなんて人はどこまでいるかわかりませんが、自分にとってはなかなかのフラストレーションが溜まりました。
だったらボックス席で中央近くの席を取るか、自由席で最上階に行くかすればだけなんですが。
応援している人を否定するわけではなくて、結局、自分の場合、アメフトはテレビで見ていた方が楽しめるのではと最近思っています。野球でも現地よりもテレビのほうが好きですし。
だから何だといえばそれまでなんですが、アメフトでも野球のイニング交代のときみたく応援休憩の時間があったらいいのになとちょっと思いました。
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ということで、ジャパンXボウル2018についてでした。