Written by HOMMURA Kyohei. (@YouTube&@Twitter&@Facebook)
今回はゾーンディフェンスで守り切るポイントと練習法法について書きたいと思います。
ゾーンディフェンス
ゾーンディフェンスというのはフィールドの何分割かにして、それぞれディフェンスプレーヤーに担当区域を割り振って守るディフェンスのやり方です。
もう一つの守り方としてマンツーマンディフェンスがあります。これはオフェンスプレーヤーにそれぞれディフェンスプレーヤーを割り振って守ります。
必ずしもそうとは限りませんが、ゾーンディフェンスは組織として守るイメージ、マンツーマンディフェンスは個人個人で守るイメージです。フラッグフットボールにおいてはゾーンディフェンスで守るケースがほとんどです。その理由はいくつかあると思います。
ゾーンディフェンスでとりあえず上手な人をディープゾーンカバーに据えておけば一気にタッチダウンされることが少なく、比較的何とかなる感覚はあります。
また、アメフトと違ってフラッグフットボールではQBへのプレッシャーが掛かりにくいので、マンツーマンディフェンスにすると4秒も5秒もタイトカバーしなければいけないことになり、マンツーマンディフェンスよりはマシという考え方もあると思います。
ただ、ゾーンディフェンスにしてもレシーバー4人に対して、ディフェンスはラッシュを除いて4人で守らなければいけないため、相手のオフェンスコールをしっかり予想してレシーバー全員がカバーできるようにゾーン割りをしなければパス成功を防ぐのはなかなか難しいです。
ゾーンディフェンスのポイント
そんなゾーンディフェンスにおいて、自分が思うポイントを挙げていきます。
- 担当区域を明確にして守る(でも、オフェンスの全体像が見えれば崩す)
- ディスガイズをしてQBにプレスナップリードを許さない
- 攻めたいコールやプレーを明確にする
それぞれのポイントについて解説してきます。
担当区域明確にして守る
これはゾーンディフェンスをやっている上で当然のことですが、この担当区域というものをどのように捉えているかというのはなかなか不明確な部分があります。
例えば、下のような「2-2 ZONE」の場合、アンダーゾーン、ディープゾーン、それぞれ2人ずつで守ることになりますが、アンダーとディープの区切りはどこになるのでしょうか。
この図であれば7ヤードとしていますが、これはシチュエーションによって異なります。また、相手オフェンスのフォーメーションによっても変わる可能性があります。一方は5ヤード、もう一方は10ヤードだと思っていると想定外のミスが出て、大きく進まれてしまう可能性があります。
同じゾーンディフェンスをやるにしてもそのシチュエーションでアンダーゾーン担当のディフェンスプレーヤーはどこまでを担当して、どこからはディープゾーン担当に任せるのかを明確にして、それを守ることでミスが少なくなります。
ちなみに、「2-2 ZONE」だと誰がどこにセットして守るのかいくつかバリエーションがあります。これは3つ目のポイントにつながるので後述します。
カッコ書きで「でも、オフェンスの全体像が見えれば崩す」と書きましたが、ゾーンディフェンスだと枚数が足りずにどうしてもコール負けしてパス成功を許す場合が出てきます。テキトーに足りていないからといって担当区域を崩してカバーしにいくというのは危険なので止めた方がいいです。ただし、オフェンスの全体像が見えるとき、どこに誰がいて、どのレシーバーが空いて、自分しかそれをカバーすることができないのがわかるときは崩してもいいと思います。
逆に言うと、コール負けを極力なくすためにはレシーバーをカバーしつつ、相手オフェンスの全体像を把握できるようにしておく必要があります。
ディスガイズをしてQBにプレスナップリードを許さない
「ディスガイズ」というのは、相手オフェンスを惑わすために、ゾーンディフェンスの担当区域とは異なった場所にセットすることです。
下のように「1-3 ZONE」でセットしつつ、スナップされる直前、あるいはスナップされた直後に大きく移動して「2-2 ZONE」で守ります。
QBは相手ディフェンスのセット位置を見て、どこが空くのか、どこのゾーンを攻めればいいのかを予想してプレーをはじめます。QBが「1-3 ZONE」だと思ってアンダーゾーンにパスを投げると、実は空いておらずディフェンスプレーヤーがいるということになります。
ディスガイズの効果はディスガイズをしたときだけではなく、ディスガイズをしなくてもQBは「相手がディスガイズしているかどうか」を確認する作業が一つ増えることになるので、パスのタイミングを遅くしたり、QBサックのチャンスを誘発することになります。
なので、勝負所でディスガイズしてパス失敗やインターセプトを狙うだけではなく、序盤にディスガイズがあると見せておくだけでも効果があります。
オフェンスは相手セット位置を見てプレー変更などができるので、相手ディスガイズができないとひたすら後出しジャンケンができることになってしまいます。これはディフェンスが圧倒的に不利なので避けなければいけません。
攻めたいコールやプレーを明確にする
3つ目のポイントは少し抽象的になりますが、これが一番重要だと思っています。
ゾーンディフェンスではマンツーマンディフェンスに比べて待ちの姿勢になりがちで、カバーもある程度ルーズになってしまいます。しかし、そうなってしまうと相手にパスミスが出るか、コール勝ちするかしないとズルズルと進まれてしまうことになります。
なので、ゾーンディフェンスにおいても攻める姿勢がないと相手オフェンスはなかなか止まりません。それは単純に「3-1 ZONE」のように前にかけることだけではありません。
その攻めの一つが前述したディスガイズです。
ディスガイズで相手QBをうまく騙すことができればインターセプトできる可能性が高まります。もし、特定のシチュエーションで特定のプレーコールが出されると予想できた場合、あえてそのプレーがうまくいくようなゾーン割りにセットしておくことでそのプレーコールを誘い出してインターセプトを狙うという作戦が考えられます。
相手の得意プレーを潰すというのは非常に重要で、ただのパス失敗ではなくインターセプト、もしくはできなくてもあわやインターセプトという状況を作り出すことができれば、相手はそのプレーコールが出しにくくなります。そうすることでディフェンスから主導権を握ることができます。
ディフェンスでのハドルは結構単純作業で、どのカバーをするのかというのを伝えればだいたいが事足ります。
しかし、どのプレーを止めにいくのか、どういったプレーがきたらインターセプトを狙っていいのかなど細かなことを決めておくことで、より攻めたゾーンディフェンスをすることができます。
最初のポイントに出ていた「2-2 ZONE」のセット位置においても、LBが外側のレシーバーの対面にセットするものと、センターや内側にいるレシーバーの近くにいるものとでは守り方が全くことなります。
上のような「2-2 ZONE」であれば、ラッシャーがブロックできる可能性があるとはいえ真ん中のゾーンが弱点になります。しかし、それぞれのディフェンスプレーヤーの中心であるため誰でもそれをカバーすることができますし、パスが通されてもスグに全員で寄せにいくことができます。
上のような「2-2 ZONE」であれば、センターや内側にいるレシーバーへのトスプレーやハンドオフからのランプレーに対応しやすくなる分、アンダーゾーンの外側や2人のセーフティの間が弱点になります。
「2-2 ZONE」のバリエーションは他にもありますが、前にセットしているLBがまずどんなプレーを止めたいのかというのが明確になっていないとゾーンディフェンスで攻めることができません。
「アンダーゾーンの自分の担当地区にきたレシーバーをカバーする」という意識と、「センターフックは通されてもいいから、まずは外側にセットしているエースレシーバーへのフックは止めにいく」という意識とではディフェンスの精度はかなり違います。
慣れている人はもちろんですが、初心者にとっても前者のような漠然としたカバーというのは難しく、後者のように担当地区は決まってはいるけれどやることが明確であるほうが動きやすいことも多々あります。
これをもっと明確にするために考えたいのは「フィールドを5等分以上にする」ということです。
これについては以前の記事にも書きました。
4人でゾーンディフェンスを敷くけど5等分以上するということは、誰も担当していない区域を作るということになります。これはある程度リスキーなことではありますが、4等分に比べてそれぞれの担当区域は狭くなっているのでより狙いを絞って守ることができます。
LBが外側にセットする「2-2 ZONE」の場合、アンダーゾーンは3分割、あるいは4分割されるようなイメージをもつことでより狙いを明確にすることができます。
このように5分割以上にすると必然的に誰もカバーしていない区域が出てきますが、そこは割り切ってパスは通されてもいいからタッチダウンだけは防ぐという意識で守ります。自陣ゴール近くであればタッチダウンは仕方ないけどコールで勝てればワンチャンという考え方もできます。
上図では、右のLBが右の外側にセットしているレシーバーのフックなどをタイトカバーで防ぎつつ中央のLBはセンターなどへのトスプレーをカバーしています。
バリエーションとしてここから左のセーフティが上がって「3-1 ZONE」にすることも考えられますし、「3-1 ZONE」でのセットからこのように守ることもできます。こうやって守ることである程度相手オフェンスの攻め手を限定させることができます。
ずっとこのような守り方をする必要はなく、勝負所で割り切ってやるというのがいいのかもしれません。
これにディスガイズを組み合わせて使っていくことで、「ディスガイズしているんだろうけど最終的にどんなカバー割りしているのかよくわからない」とQBに思わせることができれば理想的です。
練習方法?
これは先日、ふつうにプレー合わせをしていて思いついたのですが、ディフェンスの人数が少なくするとより上記のポイントが意識できます。
相手オフェンスの5人に対して、ディフェンスはラッシャーを含めれば4人、ラッシャーなしであれば3人で守ります。4人の場合、ノーラッシュで4人でゾーンカバーしてもただただプレッシャーのないディフェンスになるだけなので、必ずラッシュを入れます。
相手のレシーバー4人に対して、パスカバーするディフェンスは3人になるので圧倒的にディフェンスが不利です。単純にフィールドを3分割して3人でゾーンディフェンスを敷いたところでほとんどのパスは通されてしまいます。
なので、ディフェンス側はリスクを負って4分割以上で守ることになります。単純にそのままセットしていたらQBにオープンになるレシーバーがバレてしまうので、ディスガイズを入れることになります。
また、漠然とリスキーなゾーンディフェンスをしていてもしょうがないので、相手オフェンスの何を止めること目的にするのかというのを明確にすることになります。
ラッシャーもただただQBサックを狙うのではなく、ディフェンスの人数不足を補うためにどこのゾーンに投げられないようにすればいいのかを意識してラッシュすることになります。
そもそもディフェンスの人数が足りていないのでパスを決められるのはどうしようもないことですが、きっちりディフェンスの狙いがハマれば止めることもできます。
例えば、下図のようにラッシュでウィークサイド(レシーバーが少ないサイド)にQBをロールさせつつ、センターフックをブロックしていって、パスカバーをしているディフェンスがそのサイドに寄せて守ることができればオフェンスはなかなか厳しい状況になります。
うまくラッシュがブロックできずにセンターフックを通されてしまったり、ロールして逆サイドに投げられてしまった場合にはしょうがないので全員で素早く寄せにいくしかないです。
また、プレー途中でオフェンスの全体像が把握できて、この守り方がうまくいかないと判断できればゾーンを崩してカバーしにいきます。
こうやってディフェンスの人数を減らすと上記の3つのポイントが自然と意識できるのではないかと思っています。
逆に、ポイントが理解できていないと人数減らしても守れないということかもしれません。あくまで思いつきですがよかったら参考にしてみてください。
ということで、ゾーンディフェンスの守り切るポイントと練習方法についてでした。