Written by Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は学習指導要領におけるフラッグフットボールの立ち位置について書きたいと思います。
前回はフラッグフットボールの3つの展開について書きました。
この記事のなかで、学校現場ではフラッグフットボールそのものをプレーすることには価値は置いていない、といったことを書きました。
では、学校現場でフラッグフットボールはどのような立ち位置にあるか、ということを今回は書いていきたいと思います。
学習指導要領
まず、学校現場というのは文部科学省が定めている学習指導要領によってすべての授業が進められます。
この学習指導要領をもとに、国語は何時間、算数は何時間という具合にカリキュラムが組まれ、どういった目的をもってその科目や授業を行うか、ということが決められます。
よく「フラッグフットボールが学習指導要領に載った」という表現を使われますが、実際はそうではありません。
学習指導要領には大まかな目的や方向性が書いてあるだけなので、フラッグフットボールはおろかサッカーやバスケットボールも載っていません。
フラッグフットボールが載っているのは、「学習指導要領"解説"」です。
学習指導要領解説
「学習指導要領解説」というのは学習指導要領に書いてある目的などを達成するためにもっと具体的にどのような授業を行うのか、ということが解説されています。
この「学習指導要領解説」のなかに「フラッグフットボール」が記載されています。
では、どのように記載されているのか。
記載は2カ所です。
ア ゴール型ゲーム
(ア)コート内で攻守入り交じって、ボールを手や足で操作したり、空いている場所に素早く動いたりしてゲームする。
(イ)ゴールにシュートしたり、陣地を取り合って得点ゾーンに走り込んだりするゲームをする。
[例示]
○ハンドボール、ポートボールなどを基にした易しいゲーム(手を使ったゴール型ゲーム)
○ラインサッカー、ミニサッカーなどを基にした易しいゲーム(足を使ったゴール型ゲーム)
○タグラグビーやフラッグフットボールを基にした易しいゲーム(陣地を取り合うゴール型ゲーム)
・ボールを持ったときにゴールに体を向けること。
・見方にボールを手渡したり、パスを出したりすること。
・ボール保持者と自分の間に守備者がいないように移動すること。
(引用元)小学校学習指導要領解説:文部科学省
ア ゴール型
攻撃側プレーヤー数が守備側プレーヤー数を上回る状態をつくり出したり守備側のプレーを制限したりすることにより、攻撃しやすく、また得点が入りやすくなるような簡易化されたゲームをする。
(ア)投げる、受ける、蹴る、止める、運ぶ、といったボール操作をしたり、ボール保持者からボールを受けることのできる場所に動いたりして、攻守入り交じったゲームができるようにする。
(イ)攻撃側にとって易しい状況のなかで、チームの作戦に基づいた位置どりやボール操作によって得点できるようにする。
[例示]
○バスケットボール
○サッカー
○ハンドボール
○タグラグビー、フラッグフットボール
・近くにいるフリーの味方にパスを出すこと。
・相手にとられない位置でドリブルすること。
・ボール保持者と自分の間に守備者を入れないように立つこと。
・得点しやすい場所に移動し、パスを受けてシュートなどをすること。
・ボール保持者とゴールの間に体を入れて相手の得点を防ぐこと。
(引用元)同上
上は3年生と4年生の「2 内容」の「E ゲーム」の「(1)技能」における記述です。下は5年生と6年生の同じ箇所の記述です。
フラッグフットボールの立ち位置
詳しい解説については後日書きたいと思いますが、この記述からフラッグフットボールの立ち位置について以下のようなことが考えられます。
1.1年生と2年生においてはフラッグフットボールの記述はないということ。
2.バスケやサッカーといったメジャースポーツと並列で例示されているということ。
3.タグラグビーと並列で記述されているということ。
4.難易度やパワーバランスを変更するように明記されているということ。
1.1年生と2年生においてはフラッグフットボールの記述はないということ。
1年生と2年生の内容についてフラッグフットボールの記述はないものの、タグやフラッグを使った「鬼遊び」として上学年と同じように例示されています。
2.バスケやサッカーといったメジャースポーツと並列で例示されているということ。
例示されているスポーツをすべてやらなければいけないというわけではなく、例示されているスポーツのどれか、もしくは、それに似たスポーツをやるように書かれています。ざっくり言うと、「バスケやるか、サッカーやるか、フラッグフットボールをやるか」というような選択肢がある状況です。
3.タグラグビーと並列で記述されているということ。
上記のような選択肢があったときに今ままで聞いたことがないようなスポーツをやってみよう、とはなかなかなりません。なぜなら、小学校の体育授業の多くは担任の先生が行うので必ずしも体育やスポーツに理解がある先生ではないからです。ですが、市町村の教育委員会や学校全体の方針として、サッカーやバスケといったメジャースポーツではなく、独自の路線でやろうということがあります。
そうなったときに、並記されている「タグラグビー」をするのか、「フラッグフットボール」をするのか、という話になります。これはその場所の文化にもよることが大きく、川崎市のようにアメリカンフットボールとの繋がりが多い地域は「フラッグフットボール」が選ばれていますし、ラグビーが盛んな地域は「タグラグビー」を選択していると思います。
4.難易度やパワーバランスを変更するように明記されているということ。
体育授業で行われているサッカーやバスケがスポーツ少年団でやっているルールでは行われていないのと同じように、フラッグフットボールも体育でやるときはNFL FLAG大会ルールで行うことはありません。必ず難易度やパワーバランスを考慮してルールが変更されて行われます。これは、フラッグフットボール協会の「フラッグフットボール公式規則」とも異なります。
フラッグフットボールはオフェンスするチームとディフェンスするチームが明確に分かれていると特徴があるので、それを活かして、それぞれの人数を調整するだけで容易にパワーバランスを変更することができます。
4-4でオフェンスがなかなか進むことができないな、と考えればディフェンスが1人少ない4-3で行うことが可能ですし、授業が進むにつれオフェンスが上手くなれば4-4に戻すことも可能です。
こういった微調整をしていった結果、NFL FLAG大会でやっているようなフラッグフットボールからどんどん遠ざかった「フラッグフットボールっぽいスポーツ」が体育授業で行われているということになります。
学校の先生からすればフォワードパスが2回投げられようが、スクラムが組まれようが、「学習指導要領」に書いてあるような目標や目的、「学習指導要領解説」に書いてあるようなポイントや内容が押さえられてあれば何の問題もありません。
フラッグフットボールを普段やっている方々は学校で"自身が思っているような"フラッグフットボールをやることでプレーヤーが増えるといいな、と思っていると思いますが、学校現場からすればフラッグフットボールはこのような立ち位置でしかない、ということを認識する必要があると思います。
ということで、フラッグフットボールの立ち位置についてでした。