Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は過去に書いたマンツーマンディフェンス対策の記事をリライトして1本にまとめてみました。当時よりもちゃんと書けていると思います。
過去記事
今回はリライト記事ということで、下記の過去記事を基にしています。書いてあることはほとんど変わらないとは思いますが、1本にまとめて書いてあった方がいい気がしたのでリライトしてみました。
マンツーマン・ディフェンスへの対策 その1「レシーバーを交差させる」 - RED ZONE
マンツーマン・ディフェンスへの対策 その2「ミスマッチを狙う」 - RED ZONE
マンツーマンとゾーン
フラッグフットボールのディフェンスの作戦は大きく分けてマンツーマンディフェンスとゾーンディフェンスの2種類があります。
マンツーマンディフェンスはそれぞれの担当選手を決めて、ゾーン・ディフェンスは担当区域を決めてカバーします。オフェンスとしては、相手がこのどちらで守っているのかというのを把握するのが最初になります。
なぜなら、この2種類のディフェンスに対する有効なオフェンスの作戦は違うからです。それぞれに有効なオフェンスの作戦を把握して的確にディフェンスの弱点を突くことで、効率的の得点していくことを目指します。
マンツーマン・ディフェンスの特徴
オフェンスから見たマンツーマンディフェンスの特徴として、下記の3つのことが挙げられます。言い換えればマンツーマンディフェンスの攻め所です。
ディフェンスプレーヤーの動きをコントロールすることができる。
ディフェンスプレーヤーは担当選手を決めて動くので、その担当選手が大きく右に動けば、それに合わせて大きく動かなければいけません。ディフェンスプレーヤーを特定の場所に動かせたいのであれば、そのプレーヤーが担当しているレシーバーをそこに動かせば自然とディフェンスプレーヤーもそこに動きます。
1対1の能力が大きく影響する。
レシーバーとディフェンスプレーヤーが1対1で勝負している状況なので、パスの成否はその1対1での能力が大きく影響します。1対1の能力というと、身長やスピード、キャッチ能力や駆け引きといったことです。
レシーバーの能力がディフェンスプレーヤーよりも優れていたらパスは通りやすいですし、劣っていれば失敗する可能性が高くなります。
どこかで失敗させればロングゲインができる
オフェンスとディフェンスはどの局面に対しても基本的には1対1なので、ディフェンスは他のプレーヤーのサポートがしにくい状況にいます。オフェンスはどこかで1対1で勝てたり、どこかでディフェンスのミスを誘発することができれば一気に進むチャンスになります。
オフェンスはこういったマンツーマンディフェンスの攻め所を踏まえたオフェンスの作戦を考えます。
マンツーマンディフェンス攻略のための3つのポイント
前述のマンツーマンディフェンスの攻め所を踏まえた上でのポイントは以下の3つです。
・レシーバーが交差するルートを使う。
・ミスマッチを使う。
・ドロープレーを使う。
・モーションを使う。
レシーバーが交差するルートを使う
マンツーマンディフェンス対策として一番ベタな方法です。
マンツーマンディフェンスではディフェンスプレーヤーがレシーバーについていくので、レシーバーが交差して走るとそれをカバーするディフェンス同士が邪魔しあってしまいます。
何にも考えずに交差するようなプレーをやってしまうとオフェンス同士がぶつかってしまう可能性があるので、上図の左では微妙に2人のレシーバーの距離を変えています。右でも事前にどちらが先でどちらが後かを決めています。
ディフェンスが思い通りに邪魔しあってくれればその瞬間にカバーが緩むのでパスを通すことができます。仮にディフェンスが交差するのに気が付いて担当選手を入れ替えたとしても、入れ替えた瞬間に隙ができるはずなのでそのタイミングでパスを投げます。
49回のスーパーボウルの最後の最後でインターセプトされてしまったプレーは、右内側のレシーバーが前のディフェンスプレーヤーをブロックすることでその後ろにいるディフェンスプレーヤーも一緒に邪魔になるようにデザインされたプレーでした。結果失敗してしまいましたが、マンツーマンディフェンス攻略としては一緒のコンセプトです。
ミスマッチを狙う
マンツーマンディフェンスでは1対1の能力がパス成否に大きく影響を与えるので、オフェンスとしては最も1対1で勝てそうなところを狙うというのが定跡です。レシーバーとそれを担当するディフェンスプレーヤーに能力差があることを「ミスマッチ」と呼びます。
最も優れたレシーバーを最も劣ったディフェンスプレーヤーが担当するように仕向けるのがベストですが、そういった状況には滅多にさせてくれないので、一番能力差が出そうなマッチアップを選んだり、レシーバーの特性を活かしたコースやパスにすることを考えます。
例えば、レシーバーが総合的にディフェンスプレーヤーに劣っていてもスピードだけとか、身長だけで見れば勝てるのであればそれは充分ミスマッチと言えるので、そこを狙うようなものです。
上図はミスマッチを意識した作戦です。一番左のレシーバーは縦へのスピードを、一番右のレシーバーは横へのスピードが活きるルートになっています。
右内のレシーバーはフィジカルでディフェンスを後ろに背負う感じになれば通すイメージです。センターはミスマッチ狙いではなく、他の3つがダメだったときやディフェンスが想定外の動きをしたときにショートパスを投げるためのコースになっています。
ドロープレーを使う
ドロープレーというのはパスに見せかけてランをするプレーのことです。
NFL FLAG大会の中学生以上のルールでは、直接スナップを受けたプレーヤーはボールを持ってランプレーをすることができないので、一度他のプレーヤーを経由してQBにボールを渡します。そうすることで、アメフトで言う「QBドロー」のようなプレーをすることができます。
相手がマンツーマンディフェンスではないかもしれませんが、下記のようなプレーのことです。
QB#4とそれを担当するLBの1対1にスピードのミスマッチができている状況をついたプレーなので、上のポイントに近い部分があります。
上の図にあるような作戦はレシーバーがすべて左方向に走ることで最終的にボールを持って走るオフェンスプレーヤーが進みやすくしています。ゾーンディフェンスであれば右サイドに誰かディフェンスプレーヤーが残っているはずですが、マンツーマンディフェンスでレシーバーを追っていくために大きく走路を空けてしまうことになります。
仮に右にいるディフェンスプレーヤーが走ってくることに気が付いて残っていたとしたら、右のレシーバーをカバーするディフェンスプレーヤーがいなくなってしまうので、スクリメージラインを超える前にパスを投げれば簡単に通すことができます。
1対1が前提のマンツーマンディフェンスに対してミスマッチを作ることで、相手はそれをカバーするために2対1にしなければならず、その結果フリーのレシーバーを生むことができます。
モーションを使う
上の3つの他にもう1つのマンツーマンディフェンス攻略において重要なカギになるのは「モーション」です。
モーションとは下図のようにオフェンスがスナップ前に1人だけセット位置を変更する動きのことです。
この動きによって、オフェンスはスナップ直前にフォーメーションを変えることができます。上図であれば右に1人、左に2人から右に3人に変更しています。
これによってマンツーマンディフェンスの相手を混乱させることができます。
ラッシャーは省略しています。マンツーマンディフェンスはセットした段階で誰がだれの担当になるか決まっています。一番右のレシーバー担当になったディフェンスプレーヤーはモーションによって担当しているレシーバーが左に大きくセット位置を移動させたので、それに合わせて自分も移動しなくてはいけません。
このときに味方のディフェンスプレーヤーが邪魔になってしまう可能性があります。
邪魔にならずにセット位置を移動できたとしても、モーションしたレシーバーはもう一度動いて右に移動する可能性もあり、どうしても対応が1歩遅れてしまいます。
オフェンスはその対応までの一瞬を狙います。
上図の作戦では、モーションへの対応に遅れたディフェンスプレーヤーからなるべく遠いところでレシーバーがパスを受けられるようにモーションしたレシーバーは外に膨らんで走っています。他のレシーバーはモーションに対応するディフェンスプレーヤーの邪魔になるような動きをしています。
まとめ
以上の4つのポイントを踏まえることでオフェンスはマンツーマンディフェンスを攻略することができます。
QBは当然ですが、パスを受ける側のレシーバーもこういった基本的なことを知っておくことでQBがどうような意図でその作戦を指示したのかがわかり、応用が利くので、知っておいて損はないと思います。
また、QBは意外と相手がマンツーマンディフェンスなのか、ゾーンディフェンスなのかわからないときがあるので、レシーバーがハドルで相手がどんなディフェンスをしているのかを言ってあげるとQBは助かります。全体像はわからなくても、「このコースで相手のCBはこういった動きをしていた」という情報があるかないかだけでもだいぶ変わります。
ちなみに、マンツーマンディフェンスの場合はQBを見ずにカバーすることもあるので、そういった視線に注目するといいかもしれません。
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ということで、マンツーマンディフェンスを攻略するための4つのポイントでした。