Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回はフラッグフットボールの可能性について書いていきたいと思います。
引用:ラグビー日本代表・五郎丸 ダメ出しの真意は… お祈りポーズ物まねに「研究不足」 - スポーツ - ZAKZAK
発端はある体験イベント
タイトルにある「フラッグフットボールからはじめてラグビー日本代表を目指す」というのは浦安市で開催された小学生向けの体験イベントから取っています。
【フラッグフットボールから他スポーツへ!】千葉県浦安市ではフラッグフットボールの体験イベントが開催されます。その名も「フラッグフットボールからはじめてラグビー日本代表を目指そう!!」小学生世代は様々なスポーツに取り組みましょう!http://www.city.urayasu.lg.jp/events/kodomo/seishonen/1012923.html
フラッグフットボールさんの投稿 2016年2月1日
もとの記事は削除されています。
この「フラッグフットボールからはじめてラグビー日本代表を目指そう」というのは誰が見ても違和感があると思います。
フラッグフットボールというのはアメリカンフットボールをもとにしたスポーツであり、似たようにラグビーの簡易版としてタグラグビーというスポーツもあるので、「フラッグフットボールをするなら目指すのはアメフト日本代表だし、ラグビー日本代表を目指すならタグラグビーでは?」と思うのは自然のことです。
タグラグビーとは
引用:第2回 府中市小学生タグラグビー大会フォーリスカップ開催報告|RUGBY:FOR ALL「ノーサイドの精神」を、日本へ、世界へ。
タグラグビーはフラッグフットボールと同じく腰にフラッグを付けて楕円形のボールを使います。学習指導要領解説にもフラッグフットボールと並記されているので、ラグビーとアメフトの区別がつかない人にとってみればタグラグビーもフラッグフットボールも同じスポーツに思われることは多々あります。
なので、今回のイベントの意図はわかりませんが、もしかしたらタグラグビーとフラッグフットボールを混同してしまった可能性もなくもないと思います。
ちなみに、授業でやるタグラグビーについてはこのサイトがわかりやすかったです。
教えよう - 目次 | タグラグビーオフィシャルウェブサイト
話は逸れますが、フラッグフットボールを教えたり普及活動をしている人はラグビーについても多少は知識があったほうがいいと思います。授業でやるときにタグラグビーかフラッグフットボールかの二択の可能性が高いですし、混同される場面も多いので、それぞれがどんなルールで、どんなことを意図して、どんなところが面白いのかということをしっかり理解して説明することで、本来の目的にあったなかでのフラッグフットボールの導入が望めると思います。
変なカタチでフラッグフットボールをすることで「つまらないスポーツ」という烙印を押されてしまうのであれば、タグラグビーをやってもらって「スポーツは楽しい」と思ってもらえる方が断然マシです。
フラッグフットボールでスポーツがうまくなる
話を戻します。なぜラグビー日本代表になるためにフラッグフットボールをはじめるのか。
それは、フラッグフットボールをやることでいろいろなスポーツがうまくなるからです。
「うまくなる」というのは抽象的な言い方ですが、もう少し具体的に言うと以前Takuroさんが書いていただいた記事にも書いてありますが、フラッグフットボールで身につけたボールを持っていないときの動きは様々なスポーツに転移するため、他のスポーツでも同じように動けるようになるからです。
うまくなりたいスポーツの技術面を鍛えるためには小さいころから何度も練習して習得していくほうがいいかもしれませんが、この「ボールを持っていないときの動き」というのはなかなか鍛えることができません。
というのも、サッカーやバスケではボールを持っていないときの動きがかなり重要なスポーツでありながら次々と状況に合わせた判断を迫られてしまい、毎プレーの振り返りがしにくいために小学生ではボール操作のほうを優先されてしまうからです。
もちろん、サッカーがうまくなることでバスケやフラッグらラグビーもうまくなることはあります。ただ、フラッグであればハドルがあり、毎プレーずつ途切れるので振り返りができることでこの「ボールを持っていないときの動き」というものを身につけることに比較的注力できます。
ラグラグビーもサッカーやバスケのように次々とプレーが流れていく感じではないので、作戦を立てたり振り返りをすることは可能ですが、フラッグフットボールに比べれば状況判断が重要視されるスポーツのように感じています。
なので、状況判断はQB以外はほとんどなく、作戦によって体系的にボールを持っていないときの動きを身につけることができるフラッグフットボールはスポーツがうまくなるのに最適だと言われています。
やればいいってものではないですが、フラッグフットボールが評価されているポイントの1つです。
ボールを持っていないときの動き
「お前ってやってるように見えて、たいして何もやっていないな」
自分が高校生のときにバスケをやっていて同級生に言われた一言です。そこまで動けるわけではないですし、シュートが下手くそなのでそう言われてもしょうがないな、とは思ったのですが、同時に「わかってないな」とも思いました。
なぜかと言うと、シュートが下手くそということを自覚しているので、自分はスペースを作る動きに徹していたからです。
サイドに開いたりパスのタイミングで動き出したりしてディフェンスを引き付けることで、味方がよりラクにシュートを決められるように考えて動いていました。でも、わかってくれないのがだいたいです。
自分がどうやってボールを持っていないときの動きを考えるようになったのかはよくわかりません。ただ、いくら運動できる人でもこのボールを持っていないときにどのような動きをしたらいいのかわからないセンスのない人はいます。
フラッグフットボールやアルティメットをやっていても「え、なんでそっちに動くの?」みたいに感じることはよくあります。
なので、小さい頃にボールを持っていないときの動きやスペースを作ったりそこに走り込む動きやその感覚を身につけていた方がその後いろんなスポーツで活躍できるのではないかと思っています。
そもそも同じスポーツすることがそこまで効果的ではない
アメフト日本代表になるためにフラッグフットボールをはじめる、ラグビー日本代表になるためにタッチラグビーをはじめる、というのは悪いことではありませんが、昨今では「マルチスポーツ」といって幼少のころからいろんなスポーツをやることでその後のパフォーマンスが上がるという話が言われています。
これも転移の話と関係しますが、その以外にも小学生の間はカラダにいろんな刺激を与えることで運動神経がよくなると言われており、中学生以上になるとその部分は伸びにくくなります。なので、小学生の間は細かな技術練習よりもいろんなスポーツや遊びをするほうが結果的に運動ができるようになります。
武井壮さんがよく仰っていますが、スポーツがうまくなるためには「自分のカラダを思った通りに動かせるように」ならなければいけないのに、反復練習によってカラダが馴れたためにうまくなっていると錯覚してしまうことに注意しなければいけません。
なので、ラグビー日本代表になるためにフラッグフットボールをやることは理にかなっていますが、それだけやればいいというわけではありません。
野球もすればいいですし、武道をやってもいいですし、ダーツやボウリングでもいいかもしれません。とにかくたくさんの刺激を脳とカラダに与え、そして考えて動くことが重要です。
まとめ
「フラッグフットボールからはじめてラグビー日本代表を目指そう」というのは体良く流行りを宣伝文句に使っただけのような気がします。
それほどラグビーへの注目度は高まっており、アメフト日本代表が肩身の狭いことになっている状況というのはなかなか寂しいものがありますが、しょうがないかなと思っています。
引用:アメフト・シニア世界選手権日本代表に、本学卒業生の黒川晴央選手と森章光選手が選出|News & Topics|名城大学
でも、それならそれで「アメフト日本代表になるためにフラッグフットボールをはじめよう」よりも、「サッカー、バスケ、ラグビー、どのスポーツでも日本代表を目指したい人はフラッグフットボールもやろう」といってどんな理由であれフラッグフットボールをプレーする小学生が増えれば結果的にアメフト日本代表が強くなると思いませんか?
「アメフトのためのフラッグフットボール」なってしまうことが一番つまらない展開で、「いろんな人のためのフラッグフットボールが結果的にアメフトに還元されることもある」ぐらいのテンションがちょうどいいのかな、と個人的に思っています。