Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は「トム・ブレイディに学ぶQBドロップバックのコツ」の続編で、NFLトップQBのドロップバックについて書いていきたいと思います。
引用:http://deadspin.com/which-ben-roethlisberger-will-the-steelers-get-this-wee-1791086732
ドロップバックとは
基本的な話ですが、ドロップバックとはQBがスナップ後に後ろに下がることをいいます。
後ろにステップを踏むことでディフェンスから遠ざかり、タックルをされるのを防ぎます。フラッグフットボールではQBとラッシャーは7ヤード離れていますが、アメフトとは違いブロックすることができないので、逃げるためにドロップバックをおこないます。
ドロップバックはいろいろなやり方がありQBによって動きが違いますし、プレーによって1歩、3歩、5歩などのバリエーションもあります。
前回の記事ではブレイディのドロップバックについて書きました。
ドロップバックはディフェンスから逃げるために行うものですが、同時にパスを投げるための体勢を整えなければいけません。なので、いかにして後ろへ下がるか、だけではなく、いかにして投げるかというところも注目ポイントになります。
右足から?左足から?
どのブレイディのドロップバックのなかで、左右どちらの足から踏み出していくのがいいか、ということについても言及しました。
これについては、どちらからがいいということではなく、それぞれのやりやすいほうでやればいいと思っていますが、参考としてNFLトップQBはどのようなドロップバックをしているのか挙げていきたいと思います。
Ben Roethlisberger
ということで、今回取り上げるのがピッツバーグ・スティーラーズのQB、ベン・ロスリスバーガー選手です。
ロスリスバーガーは2度チームをスーパーボウル制覇に導いているエリートQBで、引退が噂されていますが、毎年好成績を残しています。
今回、ロスリスバーガーを取り上げた理由というのは特になく、たまたまちょうどいい動画があったからです。ただ、NFLのなかで特徴的というわけではなく、オーソドックスなドロップバックの動き方なのでとても参考になると思います。
ムービーは連続で繰り返し見られるようにGIFによるアニメーション動画になっています。重いので表示が遅くなるかもしれません。
わかりやすくするため再生スピードは80%ほどに調整してあります。
Set Back & 5steps
センターから直接スナップを受けてからドロップバックするやり方を「セットバック」といいますが、アメフトではセットバックのときはほぼ後ろにRBがいてハンドオフ、もしくはハンドオフフェイクをします。
なので、フラッグフットボールのようにセットバックからRBを置かずにドロップバックするというシチュエーションはあまり見られません。
下のプレーではRBを置きつつもハンドオフフェイクをせずに5歩のドロップバックをしているシーンです。
センターの後ろでセットしているときは右足が前、そこから右足から先に後ろに下がっていきます。
ブレイディの記事で、右足を下げたときに左足の角度を変えることで効率よく踏み出せると書きましたが、ロスリスバーガーはそこまで左足の角度を変えておらず自然な感じです。
注目ポイントとしては、カラダの角度です。
最初の3歩ほどは大きく踏み出すためにやや肩が先行するする感じで左にカラダが倒れています。そこから5歩目のときにはカラダの勢いをしっかり右足で受けて、素早く投げられるようにカラダが右に傾きます。
Shotgun & 5steps
次は、センターから投げられたスナップを受ける「ショットガン」(ロングスナップ)から5歩のドロップバックをしているシーンです。
基本的には同じようなステップワークですが、スナップを受ける直前に少しだけ左足で後ろに踏み出しています。これによって後ろへ下がるための体重移動をスムースにしています。
Shotgun & 3steps
今後は逆サイドから3歩のドロップバックをしているシーンです。
ここでも右足前ですが、先に左足で少し後ろに踏んでいます。5歩のドロップバックほどカラダの傾きは見られず、ほぼほぼ真っ直ぐ立っています。
3歩のドロップバックしたあとに小さく両足で前に跳んでいます。本人はどんな意識なのかわかりませんが、自分がやるときには後ろ足で「クンッ」とカカトが着くか着かないかぐらいで踏む感じでやっています。
一番近い感覚は縄跳びで軽く跳んでいる感じです。ヒザや足首で蹴る感覚でやると無駄な動きが多くなってしまう気がします。
別アングル 3steps
同じショットガンからの3歩ドロップバックを前からと後ろからです。
注目ポイントは最初に右足を着く位置です。
前から見るとよくわかりますが、右足は左足の後ろ、もしくはさらにカカト側に踏み出されています。
これはそのあとに左足が右足の上からクロスして踏み出していくのをスムースにするためです。
右図のように右足が左足のつま先側に着いてしまうと、次の左足が大きく遠回りしなければいけなくなってしまいます。
右図のように右足をカカト側に大きく引くことでその後の動きがやりやすくなります。
Shotgun & 3steps pumpfake
ロスリスバーガーといえば、強靱なフィジカルと強肩が武器ですが、相手ディフェンスによれば「パンプフェイク」と呼ばれる投げるフリが上手いそうです。
一度投げるフリをすることで、ディフェンスを前に出しつつ裏へのロングパスを狙います。
ラインの攻防があってQBがよく見えないアメフトと、丸見えなフラッグフットボールでは少し勝手が違うかもしれませんが、リズムの良さは参考になると思います。
Play Action & 3steps
次はRBにハンドオフフェイクをしたあとに3歩ドロップバックをして投げているシーンです。
この場合でも右足が前で構えて、そこからそのままハンドオフフェイクをしています。
このプレーの流れはフラッグフットボールではあまり見られないかもしれません。ハンドオフフェイクでラッシャーのプレッシャーを軽減しつつ、下がってロングパスを投げるというのも状況によってはありだと思います。
1step
最後にほぼ下がらずに、1歩だけ後ろに踏んでからすぐにパスを投げているシーンです。
右に投げる場合にでも、左に投げる場合でも、左足はカカトだけ上げて小さく踏んでいます。
先ほどのは体重移動のためと書きましたが、ここでは体重移動の必要はほぼないので、リズムを取るというか、右足を大きく動かすための予備動作という感じです。
右足前で構えるメリットとして、1歩のタイミングで投げられることだと思っています。
左足前で構えていると、スナップを受けてそのまま投げれればいいですが、それでは右腕を振りかぶる動作が間に合わないため、左、右と2歩踏んでから投げることになります。
2歩となると、2ヤードぐらいでキャッチするタイミングに間に合わなくなります。それならそれでレシーバーのタイミングを変えればいいだけの話ですが。自分は1歩のタイミングですぐに投げたいので右足前で構えています。
構え方はQBそれぞれ投げやすいようにというのが基本ですが、プレーの作り方や投げたいタイミングに合わせるというのも一つの要素としてあります。
次回は他のQBのドロップバックについても書いていきたいと思っています。
ということで、ロスリスバーガーのドロップバックについてでした。