Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は「サッカーが劇的にうまくなるタニラダー・メソッド/谷真一郎著」についてレビューしたいと思います。
サッカーのメソッドが参考になる
オープンフィールドで動き回る球技といえば、サッカーやバスケットボール、ハンドボール、ラクロス、ラグビーなどたくさんあります。
アメリカンフットボールやフラッグフットボールはそれらの球技とは少しだけ特性は違いますが、相手の動きに反応、あるいは判断して動く、という点ではほぼ共通しています。フラッグフットボールの技術を向上させようとアメリカンフットボールのメソッドを調べても日本ではなかなか情報が集まりません。
そうなったときに、一番参考になるのはサッカーのメソッドだと思っています。
オフェンスは逐一プレーが止まるわけではありませんが、ディフェンスはゾーンやマンツーマンなどシステムも似ているところがあり、何よりスピード、アジリティ、クイックネス(SAQ)が重視されている点で多くの参考になる点を見つけることができます。
また、サッカーは競技人口も多く、情報も集めやすくなっています。
なので、フラッグフットボールの技術向上を考える時には、サッカーのメソッドを参考にするようにしています。
タニラダーとは
そのサッカーのメソッドのなかで自分が一番注目しているのが、「タニラダー」です。
タニラダーとは簡単に言うと、短いラダーで、著者の谷真一郎さんがフィジカルコーチを務めているヴァンフォーレ甲府を筆頭に多くのJクラブに取り入れられているトレーニングメソッドです。
本書のなかでは、キング・カズこと三浦知良選手が40代前半からタニラダーを使ってトレーニングをした話がでてきます。
ラダートレーニングへの懐疑心
前述したディフェンスにおいて必要とされる能力、SAQ(スピード、アジリティ、クイックネス)を鍛えるトレーニングとしてラダートレーニングはかなり一般的になってきています。
ラダートレーニングによって様々な動きによる刺激をカラダや脳に与えることによって神経系を鍛えたり、カラダの動かし方がうまくなったりというのはわかります。
ただ、どうしても「そのステップがうまくなっているだけじゃないのか?」という疑いが自分のなかで拭えません。複雑なステップを素早くできる小学生に新しいステップをやらせてみると全然できなかったりするのを見ると、そういった考えが強化されます。
そのステップは競技のなかで役に立つのかというと、そうでもありません。いろんなステップをすることについて特にデメリットはないと思うのですが、足が速くなるとかSAQの向上とかそういったことに対して過大評価されているような気がしています。
4マスしかないラダー
タニラダーは4マスしかありません。これにはいろいろな意図があるみたいですが、まずはラダートレーニングにありがちな後半にかけてダラダラやってしまうことを防ぐことができます。
ダラダラとしたステップを繰り返したところで成果にはつながりません。いかに試合の局面で必要となるようなステップをスムースに素早くこなすことができるのかがポイントになるので、そのためには4マスしか使いません。
必要な動きというのは動きと動きの間にあるつなぎのステップです。
「走り→(減速)→(加速)→走り」とか、「走り→(方向転換)→走り」といった具合にカッコに入る部分がよりスムースに素早くできれば試合での動きも向上していくはずです。このステップを練習するためには20マス30マス延々とステップを続けるより、4マスでどう動くかをきっちり練習したほうが効率的です。
やり込みの意味
ラダートレーニングともう一つ懐疑的に思っているのが、やり込みの練習です。
ダッシュ何十本とか、パスキャッチ何十本とか、数をこなせば技術が向上するというのがいまいちピンと来ていません。たくさん練習したほうがうまくなった気がしますし、頑張った気になるので自信がつくかもしれません。
なぜ回数をこなしていくかというと、やっていくなかでコツを掴んだり、うまくいくカタチを反復することで身につけていくためだと考えられます。だだし、試行錯誤しているからコツを掴めるわけですし、うまくいくカタチを理解できているから反復することができます。
このへんの前提を抜きにして数をこなすというのは無意味に感じています。年齢的に若ければガムシャラにやっていくだけで、筋力アップしたり神経系が向上したりすることがあると思いますが、ハタチを過ぎればそんなことは期待できません。
だったらどうやったら効率よく動けるようになるか、というのを丁寧にカタチ作りしていったほうがいいように思っています。極端に言えば、フォームに伸びしろを求めていくしかない、と。
ということで、「タニラダー」や以前にレビューを書いた「ムーブメントスキルを高める/ 朝倉全紀監修 勝原竜太著」が参考になるのではないかなと思っています。
ムーブメントスキルを高める これなら伝わる、動きづくりのトレーニング (TJスペシャルファイル)
- 作者: 勝原竜太,朝倉全紀
- 出版社/メーカー: ブックハウス・エイチディ
- 発売日: 2016/05/28
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ポイント
ここからは「サッカーが劇的にうまくなるタニラダー・メソッド」のなかでポイントになりそうなところを引用していきたいと思います。
何%で走ると速いのか
子供たちに「速く走るためには何%ぐらいの力を入れたらいい?」と問いかけると「100%」という答えが返ってきます。それで実際に100%の力で走らせてみて、次に「今度は70%~80%ぐらいの力で走ってごらん」と促します。そのうえでどちらが速く走れたかと聞くと、子供たち全員があとのほうだと答えます。そうやって自分が一番速く走れる力加減を探させるようにしています。
「100%の力を」と思う心は力みを生みます。力みはかえって逆効果になるわけです。走るのが遅い選手は、多くの場合、遅くなる動き(スピードを落としてしまう動き)をしているだけで、じつは少し動きを改善させるだけでスピードは格段に上がっていきます。
「スピードを落としてしまう動き」というのは本のなかで述べられています。以前に「ランニング検定」の記事などでも書きましたが、速く走ろうとして脚やつま先で地面を蹴ろうとする動きはブレーキをかけてしまう動きなってしまいます。
強く地面を蹴るよりも力を適度に抜いてスムースに脚が回転していくほうが速く走ることができます。このあたりのちょうどいい加減が「70%~80%」にあることだと思いますし、なにより自分で試してみてどのくらいの感覚で走れば速いのかというのを体感することが重要だと思います。
ジャンプのポイント
ヘディングなどジャンプするときにも、重要なのが「全身をパックする」「膝と足首をロックする」ことです。
パックとは「ひとまとめにする」ということ。つまり、身体をひとまとめの塊にして、より大きな地面反力を得るのです。パックされていないと、クッションが生まれてしまい、力が逃げてしまいます。
(中略)
ロックするとは「固める」ということ。前述のパックの感覚に加え、接地するときに、膝と足首が屈曲してタメの時間が生まれないようにします。両足その場ジャンプで、もっとも接地時間が短く、高く跳べるときは、膝も足首もロックされています。その感覚を、そのほかの動きの接地時につなげていきます。
全身を剛体のひとかたまりとして考えていかに動かすのか、という考え方は「ムーブメントスキルを高める」にも書いてありました。よく「体幹」という言葉を使われますが、身体を支える力が足りていないと力を加えてもどこかしらがクッションの役割をしてしまい、力が逃げてしまいます。
筋力アップでより強い力を加えるという前に、強い筋力で「関節を固定する」という役割を担うのが大きいような気がしています。太ももの筋力が強くて大きな出力できても、ふくらはぎの筋力が不足してれば足首が固定できず結果として大きな力を得ることはできません。
ジャンプ・トレーニング
まずは、その場の両足ジャンプで、全身を使って自分がいちばん高く跳べる感覚を養います。こお感覚が体得できれば、より大きなエネルギー(地面反力)を得るための準備段階はクリアーです。
次に片足交互のジャンプで高く跳びながら前方に進んでいきます(バウンディング)。ここでもより高く、より遠くへ跳べるようになってきたら、その感覚を前項の走り方に落とし込んでいき、接地した脚を素早く引き付けて前方に運び、その脚に重心を乗せていきます。
Q&Aの5~10メートルの短い距離で爆発的な加速をするためには、という質問への回答です。
トレーニングの内容としてはほとんど陸上のトレーニングです。自分が高校生のときにたまに陸上部の同級生に習って走る練習したりしていましたが、そういった越境的なトレーニングはどのスポーツにも必要だと感じています。陸上のトレーニングを「まっすぐに走るためだけのトレーニング」と捉えてしまうと損でしかないです。
単純だからこそ余白がないほど「いかに効率よく速く走るためにどうしていくか」ということを考えているはずなので、参考にしない手はないと思っています。
ちなみに、下が前述の「バウンディング」です。
まとめ
タニラダーは何度も購入を考えているのですが、サイトがいかにも胡散臭いので二の足を踏んでいます。とくに問題はないと思うのですが、イマイチ信用できないところがあって、サイトだけでいろいろ調べていました。
今回、本を読んでみて、さらに興味が沸いてきたのでラダーを買ってみようと思っています。ラダーとよりも、付属のDVDが目当てです。ボールを伴う動きのトレーニング「アドバンスドDVD」がついたものもあるみたいですが、そこはそこは必要ない気がしています。
買っていろいろと試してみたらまたレビューを書いていきたいと思います。
ということでタニラダーについてでした。