Written by HOMMURA Kyohei. (@YouTube&@Twitter&@Facebook)
今回はNFL2021年シーズン開幕を前にそれぞれのチームの戦力分析などをやっていきたいと思います。
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はじめに
2020年シーズンのスタッツや移籍、補強プレーヤーなどを中心にストロングポイントがどこかとか、課題はなにかみたいな話をしていきます。ただの素人なので間違いがあるかもしれませんが、そのあたりご了承ください。
なお、まだプレシーズンで、各チームのロスターやデプスチャートが出ていません。なので、こちらのPFFのスターティングラインナップのランキング記事をもとにしています。また各チーム、各選手情報、スタッツ、移籍情報など参考にさせていただいたサイトは最後に一覧で載せておきます。
ということで、最初にビルズの戦力分析をやっていきます。
AFC東地区
まずはAFC東地区についてです。
2010年から2020年までの11年間の地区の順位はこんな感じになっています。2000年代からだいたいペイトリオッツが地区優勝をしており、優勝を逃すのは2008年以来、負け越しは2002年以来で、2020年は3位となりました。
今回そのペイトリオッツに代わってビルズが地区優勝をしています。言うまでもなくペイトリオッツからトム・ブレイディが抜けたことが大きく影響していますが、下馬評通り地区優勝で勝ち進み、スーパーボウルまであと一歩と迫ったというのは大躍進と言ってもいいんじゃないかなと思います。
2021年シーズンに向けて各チームの補強については後ほど詳しくやっていきますが、順当にいけばビルズが地区優勝の最有力候補になると思います。
注目選手
2020年のビルズを振り返ってみると、なんといってもQBのジョシュ・アレンの活躍が大きかったです。パス獲得ヤード4,544、パス成功率69.2%、タッチダウンパス37個、インターセプト10個、QBレーティングは107.2、ラン獲得ヤードは421ヤード、タッチダウンランは8個という成績を残しています。
タイトルを取るほどまでにはいきませんでしたが、もしかしたらMVPに選ばれるのではないかという声が出たほどでした。思い切りのいいパスと自らのランでチームを引っ張っていく姿が非常に印象に残っています。
6年284億円で契約延長を行っており、今後チームリーダーとして長く活躍することを期待されています。ちなみに、PFFによると、レシーバーが捕れそうもないパスを投げる確率は16.5%で、この数字は2020年シーズンのなかでトップ5に入るものだったようです。
こちらはジョシュ・アレンのネクスト・ジェン・スタッツの「QBグリッド」です。ゾーン別に、緑がリーグ以上、黄色が平均的、赤が平均以下の数字になっていることを示しています。左のスクリメージ手前が平均以下になっているのは、どちらかというと戦略的なところが大きいと思いますが、全体的に左サイドよりも右サイドへのパスの数字がよくなっています。
これはエースレシーバーであるステフォン・ディグスが右サイドにセットするのが多いというのと、右にロールアウトしながらパスを投げることが多いので、自然と右サイドの数字がよくなっているのではないかなと解釈しています。
大きな偏りが出てくると、相手に対策されやすくなると思うので、ディグス以外のレシーバーの活躍、左サイドへのパスというのは1つ注目ポイントになると思います。
そして、もう一人躍進したプレーヤーといえば、先ほど出てきたエースレシーバーのステフォン・ディグスです。バイキングス時代は2番手のロングターゲットで、ここ一番に強いレシーバーというイメージがありましたが、1番手として安定して活躍するレシーバーとなったように思います。
パス獲得ヤードは1535で、リーグトップの数字を記録しています。タッチダウンレシーブ数はそこまで増えていませんが、ターゲット数がキャリア最高の数字となっており、1試合当たりの獲得ヤードはリーグ2位となっています。また、20ヤード以上のビックプレーの回数が20回とリーグ5位となっています。今後より一層マークが厳しくなるはずなので、それでも活躍できるのかというのはビルズの躍進の鍵になると思います。
Offense Team Stats
ここからはオフェンスのチームスタッツを見ていきます。一番右の数字はリーグ順位です。
1試合当たりの得点は29.9点で3位、獲得ヤードは385.4ヤードで6位とトップレベルの攻撃力となっており、サードダウンコンバージョン成功率は46.64%で4位、フォースダウンコンバージョン成功率は83.33%で1位と勝負強さもあるようです。
ただ、フォースダウンコンバージョンについては、1試合当たり0.5回で25位となっており、そこまでギャンブルはしないけど、やるときは高確率で成功するというような数字になっています。
残り20ヤード、レッドゾーンにおけるタッチダウンの確率は61.04%の12位となっており、タイムポゼッションも11位とトップレベルではないですが、高い数字になっています。得点と獲得ヤードの割りにこの数字がそこまでというのは、ディグスを中心としたロングパスでのパスが多いというのがあるのかもしれません。
続いてパス成功率は68.02%で4位と高く、被サック率も4.66%の7位と好成績となっています。被サック率が低いのはOLの能力だけではなく、ジョシュ・アレンの走力のおかげというのもあると思います。
FGについては、成功率が81.4%で19位と苦戦しています。キッカーはドラフト6巡目全体188位で指名されたテイラー・バスが務めています。50ヤード以上は4/6と悪くありませんが、30ヤード台が6/9とこの距離台では最多の失敗数となっており、FGは1試合平均1.8回と機会が多いだけに、改善が望まれます。
ギブアウェイというのは、インターセプトされたり、ファンブルリカバーされて相手に攻撃権を渡してしまうことですが、この数字は1.2回とそこそこいい数字になっています。
反則については、オフェンスとディフェンスどちらも足した数字ですが、1試合平均の反則回数は5.8回で20位、喪失ヤードは平均52.5ヤードで21位とよくありません。内訳を調べてみると、オフェンスのホールディングがチーフスに次いで2番目に多く、全体的にアウェイの試合でホームの1.5倍の反則を冒しているようです。このあたりは改善点になると思います。
Offense Run & Pass
次はオフェンスのランとパスの割合についてです。こちらは上からプレー数、獲得ヤード、ファーストダウン、タッチダウンのそれぞれランとパスの比率となっています。カッコ内はリーグ順位です。
リーグ全体として近年はパスに偏っている感じはありますが、それでもランの割合はすべて20位台の下位となっています。先ほどのレッドゾーンでのタッチダウンの確率が低いというのも、ゴール前でランでタッチダウンを取れずに苦労している傾向にあるからなのかもしれません。プレー数は比較的やっているものの、成果はあまり出ていない状態なので、今シーズンどのように改善されるのか注目です。
こちらはランとパスの得点期待値です。ざっくり効率度ぐらいに捉えるのがいいかなと思います。縦軸がラン、横軸がパスです。レギュラーシーズンのみの数字で、赤の点線がリーグ平均です。これによると、パスオフェンスはリーグ2位ですが、ランオフェンスは21位と低迷しており、数値はマイナスとなっています。ただ、トータルで見ればリーグ4位となっているので、大きな問題というほどでもないのかもしれません。
Defense Team Stats
続いてディフェンスのチームスタッツです。数字の内容はオフェンスのものと一緒ですが、こちらは対戦相手の数字です。
もともとディフェンスの強いチームという印象がありましたが、2020年シーズンについてはまぁまぁという感じです。平均失点は14位とそこそこですが、サードダウンコンバージョン阻止率やレッドゾーンにおけるタッチダウン阻止率が低い数字となっています。どの数字においても2019年シーズンから5%以上低下してしまっているので、ディフェンスの勝負強さ、粘り強さが戻っているのか注目です。
ディフェンス低迷の大きな要因の1つになっているのが、サック率で、2019年シーズンは8.11%で6位となっていましたが、2020年シーズンは5.83%で大きく悪化してしまいました。ここのパスラッシュは2021年シーズンの課題になると思います。
対戦相手の反則については、平均5.2回で21位、1試合平均で獲得ヤードは43.6ヤードで23位となっています。先ほど反則を冒してしまうのが多いというのがありましたが、もらう反則は少ないようです。
Defense Run & Pass
次にランディフェンス、パスディフェンスについてですが、ファーストダウン、タッチダウンのランの割合が非常に高くなっています。ファーストダウンは27位、タッチダウンは31位となっており、プレー数やヤード数と比較してもかなり低くなっており、大きな弱点になる可能性がありそうです。
続いてディフェンスの得点期待値です。こちらはオフェンスと反対で、低ければ低いほどディフェンスが優秀ということになります。先ほどサック率が課題と話しましたが、ランディフェンスが22位と平均以下となっています。パスディフェンスが10位となっていますが、分布を見ると僅差で、ざっくり平均的より少し下のディフェンスと言えるかもしれません。
2021 Bills
ここまでは2020年シーズンのビルズを振り返ってきましたが、ここからは2021年シーズンのビルズのメンバーを見ていきます。
まずはコーチ陣ですが、ヘッドコーチ、コーディネーターの顔ぶれは変わっていません。ヘッドコーチのショーン・マクダーモッドはPFFのヘッドコーチランキングで4位と高評価されています。ディフェンス・コーディネーターのレスリー・フレイジャーはヘッドコーチ歴もあるベテランで、2017年のマクダーモッド就任時からアシスタントヘッドコーチとして一緒にやってきています。ここまで話してきたディフェンスの改善の手腕が問われるシーズンになりそうです。
そして、ドラフトですが、全部で8人を指名しており、課題のパスラッシュ向上を図り、上位2人はディフェンスエンドのプレーヤーを獲得しています。1巡目全体30位のグレゴリー・ルーソーのドラフト時に自分がつけた評価はこんな感じになっています。
もともとレシーバーをやっておりスキルに課題はあるものの、身長201cm、120kgと体格は充分で、インサイドからでもアウトサイドからでもプレッシャーが掛けられると評価されています。2020年シーズンはオプトアウトで欠場していたということで、開幕スグにというよりも中盤以降で期待しておくのがいいのかなと思います。
Starting Menber
ここからはスターティングメンバーについて話していきます。一番右にある数字はPFFグレードといって、2020年シーズンのパフォーマンスをもとにPFFの独自の採点によって点数化されている各選手のステータスです。
90点以上がエリート、80点台がグッド・ハイクオリティ、70点台が平均的、69点以下が平均以下となっています。プレーヤーの評価として1つの基準ということで載せてありますが、少しクセのある評価方法で、必ずしもそのプレーヤーの世間的な評価と一致するわけではないのでその点はご了承ください。
また、2020年シーズンにNFLでプレーしていないプレーヤーについてはアスタリスクがついており、1つは2019年シーズン以前のグレード、2つは2020年シーズンのカレッジにおけるグレード、3つは2019年シーズン以前のカレッジにおけるグレードとなっています。ルーキーはどうしても高くなりがちなのでご注意ください。
まずは放出となったプレーヤーです。紫はスナップのパーセンテージが45%以上で、ざっくり先発級、もしくは準先発級という感じです。
2番手レシーバーだったジョン・ブラウンがレイダースへ移籍となっています。2019年シーズンは1060ヤード獲得と活躍しましたが、2020年シーズンは怪我の影響もあって9試合で458ヤードと奮わずリリースとなってしまいました。
アンドレ・ロバーツはリターナーとして活躍しており、2020年シーズンはプロボウルとオールプロのセカンドチームに選出されています。2021年シーズンは誰がリターナーになるかわかりませんが、スペシャルチームは戦力ダウンになるかもしれません。
ディフェンスの放出プレーヤーはこちらです。
先発だったクイントン・ジェファーソン、かつてパンサーズなどで活躍したジョシュ・ノーマンが移籍しています。ジョシュ・ノーマンといえばタイタンズのデリック・ヘンリーに吹っ飛ばされたのが印象に残っていますが、先発は3試合のみということで妥当かなという感じです。
Offense
ということで、ビルズのオフェンスのスタメンを見ていきます。
ピンクは新加入のプレーヤーです。名前の横にあるのはCBSによるTOP100の選出プレーヤーです。ホントならNFL本家のものを使用したかったのですが、日程的に100人発表されるのは後日になるので代用しました。
ジョシュ・アレンが11位、ステフォン・ディグスが12位となっています。最初のほうでレシーバーの2番手以降がポイントになると話しましたが、ベテランのエマニュエル・サンダースを獲得しています。
通算獲得ヤードは8619で、2020年シーズンでも726ヤード獲得している33歳のベテラン・レシーバーです。ステファン・ディグスとは違ったタイプで、オフェンスの幅を広げられると思います。また、スロットに入るコール・ビーズリーは173cmと小柄ながらもルートランに定評のあるレシーバーで、2020年シーズンはキャリアハイの967ヤード獲得しています。この3人のレシーバーはビルズにとって大きな強みになりそうです。
その一方で、課題となるだろうRBについてですが、2020年シーズンと変わらずザック・モスとデビン・シングレタリーの併用になるのではないかなと思います。どちらも平均的でインパクトを残せていない印象ですが、ザック・モスは2年目、シングレタリーは3年目なので、チームとしては2人の成長に期待という感じでしょうか。
オフェンスラインについては両タックルの評価が高いようです。レフトガードのコディ・フォードは怪我での離脱があったため低評価となっていますが、ドラフトやフリーエージェントで補強した上で、2020年シーズンのメンバーがそのまま残ったので2021年シーズンも安定したパスプロが期待できると思います。
プレスキッカーはタイラー・バス、パンターはドルフィンズから獲得したマット・ハックが務めます。
Defense
ディフェンスのフロント・セブンはこんな感じです。
ベテランでリーダー格であるジェリー・ヒューズが1人だけ平均以上で、それ以外は平均以下となってしまっています。2019年ドラフトの1巡目プレーヤーであるエド・オリバーやここに載っていませんが、2020年ドラフトの2巡目プレーヤーのAJエペネサ、2021年ドラフトの1巡目プレーヤーのグレゴリー・ルーソー、2巡目のカルロス・バシャム・ジュニアがどこまで頭角を現せるかが注目かなと思います。
ディフェンシブ・バックはフロント・セブンと対称的にメンバーが揃っているように思います。オールプロのセカンドチーム、CBS78位に選出されているトレデビオス・ホワイトを中心に、ミカ・ハイド、ジョーダン・ポイヤーと優秀なメンバーが揃っています。特にジョーダン・ポイヤーは2020年シーズンで124タックルを記録しており、セーフティではトップの数字となっています。ただ、セーフティの2人がベテランでパフォーマンスが下降気味というのが気になるところです。
他の加入プレーヤーはこんな感じです。
ベアーズの先発QBだったミッチェル・トゥルビスキーが加入しましたが、基本的にはジョシュ・アレンが怪我したときのためという感じだと思います。
RBのマット・ブレイダはローテーションで起用のであればいいプレーヤーだと思います。ジェイコブ・ホリスターはパスキャッチのできるTEなので、状況によっては先発になると思います。
あとは、自分はよくわかっていないのですが、Twitter上でよく話題になってるボビー・ハートが加入しています。とりあえず控えみたいですが、また話題になるといいですね。
Schedule
スケジュールはこんな感じです。
2020年シーズンに勝ち越しのチームは赤、負け越しのチームは青にしています。17戦中9戦が負け越しのチームとの対戦で、対戦相手の2020年シーズンの勝率は0.478のリーグ23位タイとなっており、比較的易しい対戦相手となっています。
ポイントになりそうなのはウィーク3からのアウェイ戦で、バイウィークを挟みますがチーフス、タイタンズ、ドルフィンズと強敵が続きます。ここを凌げば最後の4試合は負け越しチームと4連戦となるので、温存しつつ第1シードも狙えるという状況になる可能性もあるんじゃないかなと思います。
逆に序盤のドルフィンズとの同地区対決で2連敗してしまうようなことがあればなかなか難しいことになってしまいます。まずはウィーク2に注目です。
注目ポイント
総括として、注目ポイントを挙げておきます。
まずは最大のストロングポイントであるジョシュ・アレンとステフォン・ディグスを中心としたパスオフェンスに注目です。エマニュエル・サンダースやジェイコブ・ホリスターといった新戦力がどのように噛み合うのかも楽しみです。
課題としては、ランオフェンスとランディフェンスにあるのでそのあたりどのように改善されているのか注目です。
もう1つの課題であるパスラッシュについてはここ数年のドラフトでかなりディフェンシブ・ラインに注力しているので、若手の台頭に期待したいところです。
トータルでいうと断然地区優勝の最有力候補であり、スーパーボウル進出の最有力候補の1つでもあると思います。チーフスとバチバチにやりあうのを期待したいと思います。
X-Factor
最後にPFFでXファクター、秘密兵器的な存在として挙げられているプレーヤーを紹介します。そのプレーヤーはディーン・ジャクソンです。
2020年ドラフトの7巡目全体239位で指名されたコーナーバックで、2020年シーズンは5試合しか出場していませんが、少ないプレー機会のなかで優秀なパフォーマンスを見せ、インターセプトも記録しています。2021年シーズンは先発を務める可能性もあるのではないかと見られているそうです。背番号30番が出ていたら注目してみてください。
ということで、今回のビルズの戦力分析は以上です。
次回はドルフィンズをやっていきます。
参考
PFF
CBS
rbsdm.com
https://rbsdm.com/stats/stats/
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https://www.pro-football-reference.com/
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