Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は「すべてのジャンルはマニアがつぶす」という話から、アメフトやフラッグといったマイナースポーツが普及していくためにしていかなければいけないことについて書いていきたいと思います。
「すべてのジャンルはマニアが潰す」の引用元
「すべてのジャンルはマニアが潰す」というのは新日本プロレスを子会社に持つブシロードの木谷高明社長の言葉です。
この言葉が出てくる箇所を引用します。
コアなユーザーがライトなユーザーを拒絶していたがために、プロレスが衰退していった面もありました。僕は“すべてのジャンルはマニアが潰す”と思っていますから。ただ、今のプロレスに関しては、そんな排他的なコアユーザーは少なくて、みんなでプロレスを盛り上げたいという気持ちが強い。
新日本プロレスとは
新日本プロレスといえば、プロレス団体でも最も有名で一番露出度が高い団体です。団体を立ち上げたのはアントニオ猪木です。
テレビでお馴染みの蝶野正洋選手や獣神サンダーライガー選手が所属している団体といったほうがわかりやすいかもしれません。
引用:私たちはなぜ、獣神サンダー・ライガーがイロモノに見えないのか|ぼくらのプロレス
知らない人は知らないかもしれませんが、実はこの新日本プロレス、いまとても流行っています。これまでプロレスといえば男しか観ないという印象でしたが、女子人気が非常に高く、プロレス好きの女子は「プ女子」なんて呼ばれています。
女性人気も高い新日本プロレスは間違いなく数あるプロレス団体のなかで一番の人気になっています。
マニアによる排斥
プロレスのことをあまりご存じない方は「新日本プロレスが一番の人気」と言われれば、「昔からそうじゃないの?」と思う人が多いかもしれません。しかし、昔から人気のあった新日本プロレスですが、2000年代には低迷します。
それにはいろいろな要因があったのですが、その一つとなったのがあの伝説のプロレスラー三沢光晴が設立した「プロレスリング・ノア」の台頭です。
引用:プロレスリング・ノア公式サイト | PRO-WRESTLING NOAH OFFICAL SITE
プロレスリング・ノアの2000年代は三沢光晴、小橋建太、秋山準、高山善廣といった人気レスラーが所属していたのもありますが、ノアの特徴であったのがいまの時代にあった演出と「ノアだけはガチ」と呼ばれるぐらいのスタイルです。
当時はムシキングテリーを応援するために多くのちびっこが東京ドーム大会に足を運びました。(大人は全員中の人が誰だか知っています。)
引用:ベルト奪取で真の王者になれるか!? ムシキング・テリーがノアの日本武道館大会で魅せた - ファミ通.com
いままでのプロレス界になかったような動きを取り入れていったことでノアは人気プロレス団体にまで成長していくのですが、2010年代は社長でもあった三沢さんがなくなってしまってから低迷してしまいます。
これにもいろいろな理由がありますが、2000年代にノアが好きだったファンが2010年代になって保守的になり排他的になったということが挙げられると思います。
先進的だったはずが時代が追いついてくると保守的になってしまいました。いまとなっては「ノアのファンはマナーが悪い」なんて言い方もされるくらいです。
今日の試合後、リングに中身の入ったペットボトルが客席から投げつけられた。おい、それがオレに当たれば満足か?フフフッ...そんなことやってるから紙テープが禁止になるんだよ。お前たちの楽しみを奪ったのは...お前らなんだよ...。
— 鈴木みのる (@suzuki_D_minoru) 2016年3月19日
リングにモノを投げることに区別なんかない。全てはダメなやつらに汚染されたと思え。たった一人の何気ない行為が、そうでもない奴らの「全てを奪ってる」ことに気がつけよ。。。
— 鈴木みのる (@suzuki_D_minoru) 2016年3月19日
「ムカついた」「頭にきた」だから何かを投げて自分を正当化する。それでいいのか?聖域と言われた場所を汚しているのは聖域の「自称」住人。
— 鈴木みのる (@suzuki_D_minoru) 2016年3月19日
鈴木みのる選手はいわゆる外敵で、ノア所属ではないのですがそんな鈴木選手にタイトルを取られるのが嫌なのかどうか知りませんが、ノアファンからすごくバッシングを受けています。人気レスラーが少なくしてしまったノアを盛り上げてくれている一番の功労者でありながらです。
プロレスがイメージしにくいようでしたら浦和レッズサポーターをイメージするとわかりやすいと思います。
浦和レッズは落ちそうで落ちないギリギリをなんとか保っていますが、ノアの場合は新規ファンが足を運ぶような雰囲気にはなっていません。そうなると低迷する一方です。
新規ファンを常に取り込んでいかないと、こうやってマニア化していったファンが保守的に、排他的になってジャンルそのものが潰されてしまいます。
マニアに潰されないために
2000年代の新日本プロレスは人気低迷によって会社経営が厳しくなり、カードゲーム事業で有名なブシロードに買収されます。買収された新日本プロレスの動きは当時自分の目からすれば迷走しているように思えました。
プロレスラーのカードゲームなんて誰がするんだ?なんて思ってましたが、復活に大事なのはそれまでのプロレス的な流れではなく「流行っている感」でした。
ブログでも動画でもフラッグフットボールの情報をネットにたくさんあったほうがいいのはそうじゃないと「流行っている感」がないから、というのは何度もこのブログで書いてある通りで、なんとなく流行っているからはじめてみようかな、見に行ってみようかな、というようなミーハーな人をどれだけ呼ぶことができるかがそのジャンルの未来です。
もちろんミーハーな人がリピーターになるようなコンテンツの強さも必要ですが、まずはミーハーを取り込むような施策があるがどうかがポイントになります。
そして、古参の人たちはそういったミーハーを歓迎すること。これは団体としてどうこうというよりも一人ひとりの心がけの部分が大きいと思います。
どうしても古参の人は自分がそれを支え続けているという意識が強いと思います。ですが、新参を取り込まないと支えきれないのも事実です。
自分たちはそのジャンルを潰しかねないマニアだということを自覚することが、人気を獲得していく最初のステップだと思います。
でも、正直ミーハーは嫌い
とは言うものの、自分もミーハーはあんまり好きではないです。
前述した浦和レッズも自分はJリーグがはじまったときから好きなチームでした。ジュビロ磐田戦のこの劇的ゴールを知らないのに顔だけ見て長谷部誠選手が好きだなんて言う人はいまでもイラっとします。
でも、それを言ったところでサッカー界にとっては無意味どころか逆効果なんです。「ブレイクとはバカに見つかること」なんて再ブレイクを果たした有吉弘行さんは仰っていますが、そういったバカがバカを呼んで「流行っている感」が本当の流行になって人気を獲得していきます。
ゆるくてお金払わないような古参は邪魔にならないように黙って過去のゴールシーン見ながら思い出に浸っていればいいんです。
一昨年ごろから流行っていた「カープ女子」だって多少イラッとしますが、カープにお金が入って補強して勝てるならそれでいいよって思っています。
なによりもミーハーやニワカに寛容になって、邪魔しないことが大切です。
ブームが去ってしまえばミーハーやニワカは去ってしまう可能性がありますが、それは彼ら自身の問題ではなく、それをリピーターにできないコンテンツの強さとマニアの寛容さの問題だと思います。
マニアの真のマナーとは
では、マニアは自身がそのジャンルを潰すかもしれない存在であることを自覚した上でどんなものをミーハーに提供していけばいいのでしょうか。
この記事は映画についてなのですが、一部引用します。
結局、特定のジャンルのファン「以外」の人にとっては、 この手の「間口の広い作品」こそファンにはチェックしていてほしいし、 そういう作品の感想こそ求めている。
しかもその感想も、「実はかなり深いテーマが・・・」などと言ってはダメで、 あくまで相手の想像の範囲内の肯定的な意見が求められているようだ。
これは自分も映画好きなのであるあるなんですが、知っているが故にいろいろ余計なことを言ってしまって相手に要求に応えられていないことがあります。
「あの主人公がカッコいいんだよねー」ぐらいの感想がちょうどいいのに、「あのシーンはある歴史的な出来事がもとにあって……」なんて話してしまうと、あまり映画の知らない相手はそれ以上言えなくなってしまいます。
それで相手が勉強しようって話が向けばいいですけど、たいていは「そういう映画の見方ってめんどくさいから何にも考えないで見られる映画しか行かないようにしよう」という感じになってしまいます。
それではもったいないので、この記事にあるような「真のマナー」を身につけなければいけないと思います。
確かにファンにとっては物足りない。
「間口の広い作品」よりも「奥の深い作品」の良さを語りたい、教えたい。
でもその意見が全くもって求められていない以上、 「求められる意見」を語るだけにとどめるしかない。
それが、「ファン」が身に付けておくべき真のマナーなのかもしれない。
どのジャンルにおいてもね。
フットボールの話をすると、スーパーボウルのハーフタイムショーだけ注目されるのはマニアにとってみれば悔しいかもしれませんが、それが一番いい窓口であることに間違いはないので、そこを集中的に推すのが効果的です。
「ハーフタイムショーよりもプレーを観て!」って言われるよりも「過去のハーフタイムショーでポロリがあったらしいよ」って言われたほうがミーハーは取り込めるはずです。
もう少し理解が進んだとして、「あのパス凄かったよな!」って言ったら、「あのOLのブロッキングが凄いんだよ、わかってねーな」なんて返してたらミーハーは楽しめません。
実際にフットボール関係者がミーハーを排斥するようなスタンスを取っているのかどうかはわかりませんが、スーパーボウルのネタバレの件については少なからずそういった動きはあったと思います。
「スーパーボウルはSNSでネタバレしないのは暗黙の了解」でそのルールに準じろという感じでしたよね?そういう人たちがジャンルを潰すマニアです。
アメフトを復興させたいのであれば、自分自身がジャンルを潰すマニアであることを自覚し、ミーハーの邪魔はせず、必要以上に語らない真のマナーをもった存在であることが不可欠です。
ここまで4500字オーバー、滾ったぜ!!
でも、もう嫌だ……
うっそー
アメフトが復興する方法だって??
答えはこうだ!
イヤォオ!!
プロレスを知らない人はウザいなって思いましたよね?こういうのがダメな例です。アメフトを知らない人はアメフトマニアに対していまと同じ感情を抱いているはずです。
ブログを書くにしてもハイコンテクスト(抽象的で専門用語などの前提がたくさんある文)ばかり書いていてはダメということを自覚しながら毎回書いています。
こんなブログからでも1人でも多くのミーハーが生まれてくれればいいなと思っていますし、ミーハーがリピーターになってくれたらなと思っています。
ということで、「すべてのジャンルはマニアが潰す」から、潰させないようにミーハーを歓迎しよう、でした。