Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回はオフェンスのちょっとした工夫について書きたいと思います。
その工夫とは「スナップのタイミングを変える」ことです。
スナップのタイミングを変える
オフェンスの攻撃開始のタイミングになるのがセンターからQBへのスナップです。
下の記事は、このスナップのタイミングを変えることによってペイトン・マニングは得点することができたというものです。
アメフトでは上の写真にあるようにオフェンスのスクリメージラインとディフェンスのスクリメージラインの間に「ニュートラルゾーン」というものがあります。
スナップをする前に両チームとも「ニュートラルゾーン」に入ってしまうと反則になってしまいます。(厳密に言うと違う場合もあります)
オフェンスチームはハドルでどんなタイミングでスナップをするのかを決めます。
例えば、QBが「Ready Set Go」というのであれば、「Ready」と言ったとき、「Set」と言ったとき、「Go」と言ったとき、「Ready Set Go...Go Go」の3回目の「Go」と言ったときなど、何通りもあります。
ディフェンスチームはセンターがボールを動かした瞬間にスタートするわけですが、その手がかりとしてQBの声も聞いています。「Ready Set Go」の「Go」のタイミングでスナップされることがわかれば、QBの声に合わせてスタートしたほうが早くタイミングよくスタートすることができます。
QBはディフェンスが気持ちよくスタートできないようにスナップのタイミングをいろいろと工夫して声を出します。相手ディフェンスがダミーの声に反応してニュートラルゾーンに入ってしまえば罰退をもらうことができるため労せず進むことができます。
この動画のリプレイを見るとよくわかりますが、QBがいろいろ声を出して、いかにもスナップするように強く声を出したときにディフェンスの真ん中らへんにいるプレーヤーが動いてしまっています。
こういったスナップのタイミングを変えることで相手の反則を誘発するのを「ハードカウント」と呼びます。
このハードカウントは4thダウンでダメ元でやってみてダメならパント、という状況で使われます。
フラッグでは有効か
アメフトにおけるハードカウントについて書いてきましたが、フラッグフットボールではハードカウントは有効なのでしょうか。
個人的には、「有効なときもある」という限定的な話になると思っています。
というのも、フラッグではハードカウントでラッシャーがスナップ前に動いてしまっても即反則にはならないからです。ラッシャーがスクリメージラインを超えた時点で反則になるので、タイミングを誤ったことに気が付いたラッシャーはラッシュにいかなければ反則を逃れることができます。
ラッシュをやめたディフェンスプレーヤーは当然レシーバーのカバーにいくので、「ハードカウント」によってQBはラッシュのプレッシャーなしでパスが投げられますが、代わりに5人でのパスカバーに変わります。
これをどう捉えるかはそのときの状況とQB次第です。
5人でのパスカバーといっても最初から決まっている5人での作戦ではないため、ディスガイズなどの心配がないことを考えるとハードカウントをしたほうが有効と言えるかもしれません。
しかし、ここで考えなければいけないのがオフェンスもハードカウントに引っかかってしまうことです。
オフェンスプレーヤーについてもスナップ前にQBの声に反応して動いてしまえば反則を取られます。しかも、動いた時点で即反則です。
普段から同じようなタイミングでスタートしていると、頭ではわかっていてもそのタイミングでスタートしてしまうことは多々あります。ハドルで急にハードカウントをすると指示を出すと聞き逃している可能性もあります。
普段ハードカウントをすることを意識して練習していない限り、リスクの割にはリターンが少ないので、個人的にはあまり有効ではないと考えています。
ハードカウントではなくてもタイミングを変えるのは有効
相手の反則をもらうためにタイミングを変えることはそこまで有効ではないと思いますが、微妙にタイミングを変えるのはそこそこ有効です。
例えば、自分は普段は「Ready Set Hat」と言っていますが、「Ready」を省略し「Set Hat」を早口で言うときがあります。
これはタイミングが早くなるのでディフェンスの反則をもらうことはできませんが、オフェンスが反則になることも滅多になく、それでいてスナップのタイミングを変えることができます。
なぜスナップのタイミングを早くするかと言うと、ディフェンスは案外準備万態じゃない場合があるからです。
極端な例ですが、QBが「Ready」と言うのに合わせてカラダを沈めて構えるラッシャーがいます。スナップのタイミングを早くすると、そういった相手の虚を突くことができます。
これはラッシャーに限らず、レシーバーをカバーするディフェンスプレーヤーでも一緒です。タイミングの早いパスを投げたいときにすぐにスナップしてパスを投げると、ディフェンスの心の準備ができていないときにプレーすることができます。
また、逆に「Ready......Set Hat」と言うときもあります。
これはタイミングを遅らせているわけですが、ディフェンスの準備を待ってそれを観察したいときにやります。
ディフェンスがディスガイズをするときにQBが「Ready」と言うぐらいのタイミングでポジションを移動するチームがあります。スナップの準備をする前に当然ディフェンスがセットしているポジションを確認しますが、「Ready」と言ってから間を取ることで、相手にディフェンスの準備をさせてその様子を観察します。
ディフェンスとしては当然ディスガイズでポジションを変えるタイミングを変えてしまえばQBに観察されることを避けることができますが、タイミングが遅くすればするほどディスガイズの幅が小さくなってしまいます。
「Ready」を言って間を取ってから「Set Hat」をスグに言えばディフェンスがディスガイズで移動しきらないうちに攻めることもできます。
「ハードカウント」とは少し意図は違いますが、こういった感じでスナップのタイミングを変えることでディフェンスに対して優位に試合を進めることができます。
ロングスナップをするとき
余談ですが、センターからロングスナップでボールを受けるときは必ず手を叩いてからプレーするようにしています。
そもそもはNFLでフィリップ・リバースがやっているのを見てマネしてはじめたのがキッカケですが、いまはセンターにロングスナップだということを教えるために叩いています。
たまにプレー直前にディフェンスを見て、セットバックからロングスナップに変更するときがあるのですが、センターが変更に気が付かずにお尻にボールがあるままプレーが終了したということがありました。
これをやらないために手を叩いています。
この手を叩く回数でオーディブルを出すことも出来ます。毎回必ずやる動作なので、ディフェンスに気が付かれることなくプレー変更を指示することが出来ます。
ということで、オフェンスのちょっとした工夫でした。