Written by HOMMURA Kyohei. (@YouTube&@Twitter&@Facebook)
今回はQBのラッシャーに対する対応についての質問について回答したいと思います。
Question
今回は下記の質問について回答します。
ラッシャーは見てます。最初の2歩ぐらいラッシュするかどうか見て、その後、他のD#やレシーバーを見ながら、間接的に視野に入っているというイメージでしょうか。長く持ってから投げる展開になりそうであればLOSを越えるぐらいからちゃんと見て、避けます。 #peing #質問箱 https://t.co/E7dkogqvsY
— 本村 恭平 (@boekendorp) November 28, 2018
Answer
この悩み、QBとしてはあるあるかもしれません。
QBに慣れていないと、ラッシャーに目がいってしまってDFやレシーバーを見ることができずにターゲットを探すことができなかったり、逆にラッシャーに目がいかずにサックされてしまったり、ブロックされてしまったりするのはよくあると思います。
自分の場合は正直、ケースバイケースというところですが、ラッシャーは見ています。
ラッシュする可能性のあるディフェンスプレーヤーの最初の2歩ぐらいラッシュするのかどうかを見て、そのあとに他のDFやレシーバーを見ながら、間接的に視野に入っているというイメージでやっています。
ケースバイケースというのは、例えばタイミングが早いパスでラッシャーが来る前に投げてしまうパスの場合はそこまでラッシャーを見る必要がないのでほぼ見ていないです。ラッシャーがセットしているゾーンに投げ込んだり、フィールド中央近くに投げてブロックの可能性があるようであれば注意します。
逆にタイミングが遅いパスを投げるプレーコールの場合には、一旦ラッシャーを避けてから投げる、もしくは逃げながら投げるという状況になってしまうので、そういうときにはLOSを越えそうなくらいからちゃんと見て避けるか逃げるかをします。
ここからは少しポイントを挙げてラッシャーへの対応について書きたいと思います。自分のプレーというよりも他の勝てていないチームを見ながら「こうしたらいいのにな」と思う点なので見当違いだったらすみません。
QBの選択肢
「ついラッシャーに目がいってしまう」というのはどういうことなのかというと、早い話が直近の問題についてしか見えていない、考えられないという状況なのではないかなと。直近というのは物理的な距離についてもそうですし、タイミング的な問題についてもそうです。
フラッグフットボールにおいてほとんどのケースでラッシュは入ってきます。ということは、プレーコールはラッシュが入る前提で作られているはずです。
そのなかでQBの選択肢は大きく3つあります。
- ラッシャーが来る前に投げてしまう。
- ラッシャーを避けてから投げる。
- ラッシャーから逃げながら投げる。
おそらく「ラッシャーが迫りながらも投げる」という選択肢があるかもしれないですが、難易度が高いと思うのでこれは考えないほうがいいと思います。
前述したようにラッシャーが来る前に投げてしまうのであればほとんどラッシャーを見る必要はありません。ラッシャーを避けるか、逃げるのであればラッシャーを凝視してもいいと思います。フェイクなどを使って、いかにラッシャーの体勢を崩すか、ジャンプさせるかなどを考えて動いてから投げれば充分です。
こうやって考えるとQBがやることというのは意外とシンプルのように思えるのではないでしょうか。
プレーコールのときにどのタイミングでターゲットに投げるのか。そのタイミングはラッシャーが来る前なのか、あとなのか。前だったら何に気をつけなければいけないのか。あとだったらどうやって避けるか、どっち方向に逃げるのか。
そんな感じで考えていくと自然のラッシャーが気にならないようになると思います。
試合を見ていると、「投げなきゃー でもラッシャーが来ちゃう逃げなきゃー あー投げられない」みたいな感じで判断と行動を同時並行にやり過ぎていてどっちつかずになり、直近も問題であるラッシャーにしか目がいかない、ということが起きているように思います。
プレスナップリード
QBがスナップの前に相手ディフェンスの動きを見てプレーコールを予想することを「プレスナップリード」といいます。
引用:Pre-Snap Read: Nevada - Vanderbilt University Athletics
前述のような判断のフローを考えていくのもプレスナップリードの一部になります。ラッシャーに目がいってしまうのはこのプレスナップリードができていない可能性が高いです。
「プレスナップリード」では相手ディフェンスのセット位置を見て、ゾーンディフェンスなのか、マンツーマンディフェンスなのか、ゾーンであればどんな配置なのか、マンツーならどんなマッチアップなのかを考えます。
その予想されるディフェンスコールと、レシーバーに出したオフェンスのプレーコールを照らし合わせてどのレシーバーが空くのか、どのタイミングで投げなければいけないのかを考えておきます。
何となくですが、下のような優先順位を考えています。
- メインターゲット
- ディスガイズされてメインターゲットがカバーされてしまったときのレシーバー
- 何らかの事情で投げたいタイミングやコースに投げられなかったときに投げるレシーバー
- 他のレシーバーのためにおとりになるレシーバー
他にも、右にロールしなければいけなくなったとき投げるレシーバーとか、どうしようもなくなったときにとりあえずぶん投げてみるレシーバーとか、ダブルブリッツがきたときに投げるレシーバーとか重複しながら自分の状況次第でどこに投げるのかというのを考えておきます。
たぶん、いろいろな状況を事前に考えるのはQBで多く試合を経験して慣れていないと難しいと思います。なので、とりあえず「メインターゲット」と「メインターゲットがダメだったときのターゲット」ぐらいの2択は考えておいて、ダメなら投げ捨てるということでいいと思います。
どっちのレシーバーに投げるかというのはディフェンス次第になると思いますが、そのときディフェンス全体を見ることはないです。というか、できないと思います。
SFがこっちのレシーバーをカバーすればこっちのターゲットに投げるとか、LBがこっちに寄ったらあっちのレシーバーに投げるとか、基本的に1人か2人のディフェンスだけを見て判断します。
ラッシャーに目がいってしまうという人はもしかしたらディフェンスを何人も見ようとしているかもしれません。どこに注視するかを漠然とディフェンスやフィールドを見ようとすると、最終的に近づいてくるラッシャーを目がいくのかもしれないです。QBはソフトフォーカスで周辺視を使ってフィールド全体を見る、なんていいますが難しいので頑張ってやる必要はないと思います。
リスクを避けて割り切る
引用:レッドスキンズに緊急事態、QBスミスが足を骨折して即手術 | NFL JAPAN.COM
どうしても全部のプレーを成功させたいとか、少しでもゲインさせたいという気持ちが働いてしまいますが、プレスナップリードで「2-2 ZONE」と予想していたのに実際は「3-1 ZONE」だったらさっさと投げ捨てちゃうほうが勝ちに近づくような気がします。自分は想定外のことがあれば投げ捨てます。
ファーストダウンやタッチダウン取れる可能性は減ってしまうかもしれませんが、インターセプトリターンタッチダウン取られるよりも全然マシです。セーフティにならなければサック食らっても問題ないと考えた方がいいです。むしろ、序盤でサックされているとラッシャーはサックを狙いがちになるので、避けてパス投げるのか簡単になる可能性もあります。
「プレスナップリードでの読みが外れてしまったらサックを食らっても構わない」「ラッシャーが来る前に投げられなければ投げ捨てる」という割り切った考え方をしていればラッシャーのプレッシャーを必要以上に感じずに済むのではないかと思います。
ラッシャーの動きを知る
試合の序盤は前述のようにリスクを避けて無理にプレーすることを避けますが、そのなかでラッシャーの動きをよく観察することが重要です。
もちろん他のディフェンスプレーヤーについてもそうですが、まずは直近の問題をクリアしないことにはパスを投げられないので、序盤はラッシャーをちゃんと調査します。
どれくらいのスピードで来るのか、というのはもちろん、どこにセットしてどの角度で来るのか、ランプレーのときはどのような動きをするのか、ブロックしようとジャンプしてくるのかどうか、といったことについてです。もちろんビデオを事前に見て把握しておきますが、試合序盤でこういったことについてちゃんと知ることができればプレスナップリードがより正確になります。
あまり意識がないかもしれませんが、「サックを狙ってくるのか、それともブロックを狙ってくるのか」というのはQBにとって重要な要素だと思います。
過去の記事で「サックを狙ってくるラッシャーは怖くない」と書きましたが、フラッグを一目散に取りにくるラッシャーは避けるのが比較的簡単なので、避けたあとのプレッシャーなく投げられるとかなりパス成功率は上がります。逆にブロックを狙ってくるラッシャーについてはジャンプしがちなので、これもチャンスになります。投げるフェイクを入れてラッシャーがジャンプすればプレッシャーなしに投げることができます。
試合をたくさん見ていると、ラッシャーがQBにいかにチャンスを与えないかが勝負の鍵になるのがよくわかります。QB視点でいうならば、相手ラッシャーのどこに弱点があるのかというのを序盤で見極めなければ勝てません。
例えば、ランプレーを追うラッシャーであればプレーアクションパスを中心にコールしていくことでプレッシャーを軽減しながらパスできるかもしれませんし、右ストロングから左ストロングにするとセット位置を変えて違う角度でラッシュしてくるのかもしれません。
これは実際にやってみないことにはわかりません。なので、序盤にプレーアクションパスをやってみたり、フォーメーションを変えてみたりしてラッシャーがどのように動くのかを観察します。どこにチャンスがあるのかを探します。
そうやっていろいろと試すことで、このときにラッシャーはこんな動きをするというのが把握でき、プレスナップリードが正確になるので、いちいちラッシャーが近づいても慌てなくなります。
実際の試合のプレー
2018年春大会のプレーオフにてちょうどいいプレーがあったので紹介します。
このプレーではセンターが奥まで走り込んでのロングパスで一発タッチダウンとなっていますが、スナップを受ける前から投げるのを決めていました。
詳しくは相手チームのことがあるので書きませんが、プレスナップリードで左奥に投げれば通るだろうなというのは予想がついていました。ただ、中央近くに投げるパスなのでラッシャーにブロックされる可能性があると考えて、インサイドレシーバーが右手前に走っていくところに投げるフェイクを入れることにしました。
動画を見るとブロックされたのに反応してターゲットを変えたようにも見えますが、自分の頭のなかでは逆です。ホントに投げたいレシーバーに投げるためにブロックを誘っています。
投げるフリをしてラッシャーがブロックを狙って右にズレてくれれば、左奥へのボールの通り道は空くのであとは投げ込むだけになります。
逆にラッシャーがブロックを狙らわずに真っ直ぐきていればそのままインサイドレシーバーに投げるか、左に避けながら右のアウトサイドレシーバーが左サイドのミドルゾーンに走り込むのに投げるかするつもりでした。
ラッシュが気になるならちゃんと下がる
最後に気になることとしては、ドロップバックの距離です。
QBに慣れていないとドロップバックがスムースにできなかったり、パスを投げる距離に不安があってあまり下がりたくない気持ちはわかるのですが、その結果ラッシュのプレッシャーを受けてうまくパスが投げられなければ元も子もありません。
なので、まずはしっかりとドロップバックをして下がってラッシャーとの距離を取ることをオススメします。ドロップバックのやり方については下の動画で解説しています。
もしそれでも下がりたくないということであれば、ステップワークと状態が悪くても投げられる技術を磨くしかないです。
そのへんどうやったらうまくなるのかというのはたぶん数をこなしていくしかないとも思うのですが、一応練習のやり方も載せておきます。
まとめ
QBは正直慣れの部分が大きいと思います。自分がQBをやりはじめたときは、レシーバーにプレーコールを出したあとセットしたときには忘れることも多々ありました。
ただ、そのなかで試合に慣れてプレスナップリードがうまくできるようになったことで考えることがシンプルになって落ち着いてプレーできるようになりました。
どうしてもQBは大きな責任を負うので精神的なプレッシャーも大きくなります。なので、ある程度割り切って考えるほうがいいのではないかと思っています。自分はインターセプトさえなければOKぐらいに考えてやっています。
長々書きましたが、参考になれば幸いです。
ということで、QBのラッシャー対策についてでした。