Written by HOMMURA Kyohei. (@twitter&@facebook)
今回は「2-2 ZONE」について詳しく書いていきたいと思います。
「2-2 ZONE」とは
「2-2 ZONE」とはアンダーゾーンカバーが2人、ディープゾーンカバーが2人、ラッシュが1人のゾーンディフェンスのことです。フィールドを色分けするとしたらこんな感じです。
長所
バランスがよく、わかりやすい
アンダーゾーンカバー、ディープゾーンカバー、ラッシュとバランスよく配置されているので、いろんな作戦に対応できます。ディープゾーンカバーが2人いればだいたいのロングパスをカバーできますし、アンダーゾーンカバーが2人いることでランの対応もしやすいです。
ゾーン割がわかりやすいゾーン割が左右前後になっているので比較的イメージしやすく、自分のゾーンを勘違いしたり、ゾーンを離れて追いすぎたりすることは少ないです。
High&Lowに対応しやすい
オフェンスの基本にディフェンスを前後で挟む「High&Low」がありますが、単純に奥と手前にレシーバーを走り込ませるような作戦に対しては、「2-2 ZONE」で2人ともカバーできます。
相手オフェンスが「1-3 ZONE」を想定してライン際へのショートパスを狙ってきたときに「2-2 ZONE」が効果を発揮するので、ディスガイズにも有効です。
短所
シームが広い
「2-2 ZONE」の弱点はシーム(ゾーンとゾーンの切れ目)を狙われることです。横幅30ヤードに対して2人ということは、1人で15ヤードの横幅をカバーしなくてはいけません。これはある程度のパス精度があるチームだとなかなか厳しい広さです。
イメージを絵にするとこんな感じです。
特に真ん中のゾーンはCのフックや外レシーバーのポストなどで狙われる大きな穴になります。これをさせないためにはラッシャーのブロックを工夫したり、ゾーン割をズラしたりといったことが必要になります。
フォローしにくい
バランスがいいと前述しましたが、5人がバランスよく配置されているがために、それぞれのフォローがうまくいかないときがあります。これは何となくの感覚的な話です。
わかりやすいゾーン割なので自分のゾーンを強く意識してしまうというのはあると思います。
担当レシーバーがわかりにくい
ゾーンディフェンスは担当区域で分担するのでそもそも担当レシーバーがありません。ですが、ゾーンでありながらもなんとなく担当レシーバーの感覚は必要です。というのも、どのレシーバーが自分のゾーンに入ってくるのかを注意して見なければいけないからです。
例えば「1-3 ZONE」の場合にはこんな感じで意識します。
まずは、どのレシーバーを見るか決めておけば最悪そのままマンツーマンディフェンスに切り替えてずっとそのレシーバーをカバーしていくという手段にも出られます。
あくまで上のゾーン割の場合の話なので、LBがズレたりすると意識するレシーバーも変わります。
では、「2-2 ZONE」の場合はどうなるかというと、誰がどのレシーバーの何を意識するのかなかなか曖昧になってしまいます。
とりあえずは自分サイドの2人のレシーバーを意識して、アンダーにいくのか、ディープにいくのかを判断することになります。
女子チームや中学生チームなどを指導するときにバランスのよさを考えて「2-2 ZONE」をメインに採用することが多いのですが、とりあえずは担当区域にいるはいいけどどう動いていいのかわからず、どんどんシームを狙われてズルズル進まれてしまいます。
これは自分がまずは何を意識して守らなければいけないのか、ということがイメージできていないからではないかと推測しています。
「相手がこういうフォーメーションで、こういうプレーを中心に攻めているから、右前ゾーンを担当するときは、このレシーバーのこういう動きに注意すればいい」ということがわかっていればいいんですが、難しいです。
アレンジ
長所と短所を挙げてみましたが、少し短所が多い印象ですが、これは単にフィールドを4分割して守る場合です。
「1-3 ZONE」と同じくアレンジしてゾーン割をズラすと短所が解決でき、効果的なディフェンスになります。
SFが左右外レシーバーを意識したアレンジ
上図のようなどっちつかずのゾーン割から、左右の外レシーバーをSFが、Cと内レシーバーをLBが意識したゾーン割に変更します。
前のLB2人が内側に寄り、後ろのSFが外側に開きます。これによって、内側のレシーバー2人のショートパス、外側のレシーバー2人のロングパスを集中的にカバーすることができます。
一応、4分割ですが意識するのは横幅10ヤードになっているので、その分守りやすくなります。
ただ、ディープゾーンの真ん中に大きなシームができてしまうのが大きな弱点です。ここに右内レシーバーが走り込んで低いパスを決められてしまうと一発TDの危険性さえあります。このディフェンスをする場合にはラッシャーはサックするよりもこの真ん中のシームにうまくパスを通されないようにブロックしにいくことは必須です。
真ん中にパスを集めさせるアレンジ
逆にSFが寄って、LBが開くパターンです。
今度は意識するレシーバーは反対になりますが、これはそれよりも相手オフェンスの攻め所を真ん中に集中させる狙いがあります。上のパターンとは違いディープゾーンの真ん中のシームは攻めづらく、状況によってはLBが外側のレシーバーが縦に走るのについていくことも含みにしています。
そうなるとオフェンスとしてはショートパスあるいはミドルパスで真ん中のゾーンを狙うことになります。
ディフェンスとしてはそれをラッシャーでブロックできれば理想的ですし、通されたところで4人でスグに囲んでしまえばそこまで痛手にならないところでフラッグを取ることが出来るはずです。また、LBが広がっているため、外側を走るようなランプレーに対して外から追うことができるためゲインされにくいです。
短所を挙げるなら、ディープゾーンの外側がカバーしにくいのと、真ん中に正確に投げ込んでパスが成功するチームが相手だとただただ進まれてしまう可能性がある、というところでしょうか。
ストロングorウィークサイドで使い分けるアレンジ
最後はサイドで使い分けるパターンです。
上図では、ストロングサイド(レシーバーが2人いるサイド)はSFが広がり、ウィークサイド(レシーバーが1人しかいないサイド)はLBが広がってSFが寄っています。
これはある程度バランス取って大きなシームを作らないようにしています。
「2-2 ZONE」の大きな弱点である真ん中のシームはウィークサイドのSFがカバーし、ストロングサイドにいるLBとSFはレシーバー2人でのコンビネーションで攻められるのをカバーすることを意識します。状況によっては、左のLBは左レシーバーのディープも追います。
このパターンは非常にバランスがよく使い勝手がいいやり方ですが、どっちサイドがどのようにどこまで寄るのか、プレーのなかでどこまで追うのか、という状況判断が難しいです。
ディスガイズ
「2-2 ZONE」を基本に、相手ディフェンスを騙すために様々なディスガイズを用いることで、さらに効果的なディフェンスが可能になります。
「2-2 ZONE」のディスガイズは大きな動きがなくても上の3パターンを使いこなすことで充分効果的です。相手オフェンスからすればずっと「2-2 ZONE」のはずなのにシームが微妙に変化しているので、攻めにくいはずです。
より大きな混乱を相手に与えたい場合には下図のようなセット位置もあります。
全員が7ヤードで静止セットし、誰がどこの担当なのかわからないようにします。このセットからプレーがはじまってから(あるいは、プレーがはじまる直前に)上下に動きます。
QBはパスを投げるときにディフェンス5人全員を見ているわけではなく、ある特定のディフェンスプレーヤーに注目して見ることで全体図を想像しています。例えば、LBが右に寄ったら「2-2 ZONE」で、真ん中にいたら「1-3 ZONE」、といった具合です。
実際にはこんな単純ではないですが、数秒の間で5人全員の動きを把握するのは無理があるので、半分見て、半分は想像で投げます。なので、上図のようなディスガイズをされると左右前後担当しているプレーヤーが入れ替わっているので、相手QBの判断ミスを引き起こしやすくなります。
判断ミスを避けようと見て判断すればパスタイミングが遅れてしまいサックやブロックできる可能性が高くなります。
このディスガイズは「2-2 ZONE」でなくても有効で、同じように見せかけて「1-3 ZONE」などを仕掛ければインターセプトしやすくなります。
ただ、このディフェンスは全員がアンダーカバーもディープカバーもラッシャーもできるようなオールラウンドな適性が必要であり、7ヤードセットしていて予め上がったり下がったりできないので、高いカバーリング能力が必要とします。
ただ、ラッシャーを入れ替えたり、寄るor広がるを入れ替えたりと部分的に使うだけでも充分効果的なのでオプションの1つとして持っておいても損はないディスガイズです。
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ということで、「2-2 ZONE」のコツでした。